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「自然死産は報告対象になりうる」「医療圏超えた機能分化も必要」 - 参院委員会 [医療・介護総合確保推進法案]

No.4703 (2014年06月14日発行) P.8

登録日: 2014-06-14

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【概要】医療・介護総合法案は、医療事故調査制度、特定行為に係る看護師の研修制度などを焦点に審議が進んでいるが、具体的内容をガイドライン等で定めるとする答弁が目立つ。


同法案は5月21日の参院本会議で配布資料に誤記があり審議が中断していたが、2日に再開、3日の厚労委員会から内容の本格的な審議に入った。

●医療事故調査制度
羽生田俊議員(自民)は5日の質疑で、医療事故調査制度において、民間の第三者機関に事案発生の報告を義務づける対象に「死産」が含まれていることを取り上げた。羽生田氏は「死産に対しては既に(死産の原因などを記載した)死産証書を発行しているが、新たに調査に踏み込まれる恐れがあるため、産婦人科医から心配の声が上がっている」と述べ、報告対象となる「死産」の定義について、政府の見解を求めた。
<報告対象の基準はGLで明示>
厚労省の原徳壽医政局長は「人工中絶など人工死産は当然含めない」とする一方で、自然死産については「医療提供に起因するものがどれだけあるかは不明」として、具体的な基準を法案成立後に厚労省が策定するガイドライン(GL)で示すと答弁した。
羽生田議員はさらに、医療事故の事例収集を行っている日本医療機能評価機構に「事故」として届け出られる死産がきわめて少ないことなどから、「現場の感覚では、自然死産を医療に起因すると考えないのが普通ではないか」と疑問を呈した。しかし、原局長は「子宮内操作などもあり、必ずしも医療に起因しないものばかりではない」と述べ、基準についてはあくまでGLを策定する中で整理すると強調した。
<田村厚労相、「医事課長発言」を踏襲>
法案には、警察に届け出るべき異状死の基準を定めた医師法21条について、公布後2年をメドに改正の必要性を検討するとの規定が盛り込まれている。これに関して小池晃議員(共産)は10日の委員会で、同条に対する現在の厚労省の解釈を質した。
田村厚労相は、「医師法21条は、死体または死産児について、医師が犯罪の痕跡と疑われるような異状を発見した場合の届出義務の規定。医療事故を想定したものではない」と答弁。さらに「死体の外表を検査して、異状があると判断した場合には警察に届ける必要がある」など、2012年10月に当時の医政局医事課長が発言した見解(下掲)を引用しながら、事故調制度を運用する上でも12年当時の法解釈を踏襲していく考えを示した。

●特定行為に係る看護師の研修制度
5日の委員会ではまた、薬師寺道代議員(みんな)が特定行為に係る看護師の研修制度を取り上げた。
同制度は、チーム医療の推進の中で、在宅医療をはじめとして看護師の役割拡大などを目的として創設するもの。指定医療機関で一定の研修を受けた看護師が、医師による「包括的指示」が書かれた「手順書」に基づき、診療の補助として高度な専門性を要する医行為(特定行為)を実施する。
<手順書は「包括的指示」の一部>
このうち薬師寺議員は、手順書に書かれる「包括的指示」が指すものについて質問。答弁に立った原局長は「手順書は医師の包括的指示の一部」とした上で、その記載内容は行為を実施する「病状の範囲」と「診療の補助の内容」を定めるもので、行為の種類や内容は医療機関ごとに異なるとしたが、具体的な指示の記載方法は「法案成立後に省令で定める」とした。
薬師寺議員はまた、救急救命士や喀痰吸引を行う介護職員の研修に修了試験があるのに対し、特定行為の研修では試験が実施されない点を問題視。研修カリキュラムを明示するよう求めた。これに対し田村厚労相は、現在想定している研修案として、(1)臨床推論、(2)臨床病態生理学、(3)臨床薬理学─など現場で必要な医学知識を学ぶ座学のほか、シミュレータを用いた実習などを挙げたが、「具体的には法案成立後、医道審議会で検討する予定だ」と答弁した。

●病床機能の分化・連携
武見敬三議員(自民)と東徹議員(維新・結い)は3日の委員会で、病床機能の分化・連携を進める上での問題を都市部と過疎地の観点からそれぞれ取り上げた。
法案では、医療機関は現在主として担っている医療機能を(1)高度急性期、(2)急性期、(3)回復期、(4)慢性期─から病棟ごとに1つ選んで報告、都道府県はそれに基づき将来の医療需要の推計を算出し、2025年に向けた医療提供体制の将来像となる「地域医療構想(ビジョン)」を策定するとしている。
<複数医療圏またぐ機能分化も必要>
武見議員は、「交通網の発達した都市部では、患者の受療行動が2次医療圏内で完結せず、異なる医療圏間での激しい転出入がある」として、都市部における「ビジョン」策定の際の注意点を質した。一方、東議員は、山間へき地などで1つの医療機関が複数の機能を担っている場合、報告した1つの機能を基に「ビジョン」が策定されることで、地域医療に支障が生じる恐れがあると指摘した。
病床の機能分化の進め方に関して原局長は、「ビジョン」策定に際して「関係者を集めた協議の場において都道府県が事務局となり、調整機能を果たすことが重要」と回答。ある医療圏では急性期を担い、その隣では回復期を担うというように「従来の2次医療圏の圏域を超えた機能分化も考えてもらう必要がある」との見解を示した。
また、過疎地における病床機能報告制度の運用については、「あくまで主として担っている機能を報告してもらうもの。それ以外の機能を求めて来院する患者を排除するものではない」と強調した。

【記者の眼】厚労省は地域医療ビジョンの策定方法についても、法案成立後にGLで詳細を決めるとしている。そのGLは今年度中に示される予定だが、それを運用し施策を実行するのは国ではなく自治体職員だ。委員会では現場担当者の専門性の担保を急務とする指摘も相次いでいる。(F)

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