【概要】新たな財政支援制度の使途や医療計画と介護保険事業計画の整合性を図るための基本方針を定める「総合確保方針」作成に向けた議論が始まった。同方針は9月に告示される。
先の通常国会で成立した「医療介護総合確保促進法」に基づき設置された「医療介護総合確保促進会議」(総合確保会議)の初会合が7月25日に開かれた。初会合では、医療・介護サービスの提供体制改革を目的とする財政支援制度(新基金)の使途・配分に加え、医療計画と介護保険事業計画の整合性を図るための基本的な方針を定める「地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針」(総合確保方針)の作成に向けた議論が行われた。注目される新基金の使途については、人材の育成・確保に重点配分すべきとの意見が相次いだ。
総合確保会議は、(1)総合確保方針の作成と変更、(2)新基金の使途と配分、(3)その他医療と介護の総合的な確保に関する事項─などについて検討し、9月上旬に総合確保方針を告示する。座長には社会保障審議会委員・同介護給付費分科会長などを務める田中滋氏(慶大名誉教授)が、座長代理には中医協会長などを務める森田朗氏(国立社会保障・人口問題研究所長)がそれぞれ就任した。
●会議の議論に沿ったものに基金交付
同日の会合では、厚労省が総合確保方針作成に向けた論点として示した、(1)地域における医療・介護の総合的な確保の意義や基本的な方向、国・都道府県・市町村の役割、(2)医療計画基本方針と介護保険事業計画基本方針の基本となるべき事項、医療計画と介護保険事業支援計画の整合性の確保に関する事項、(3)総合確保方針を受けて自治体が策定する都道府県計画と市町村計画の整合性確保に関する基本的な事項、(4)新基金に関する基本的な事項―の4点について意見交換が行われた。
2014年度から創設された総額904億円規模の新基金の使途として多くの委員が訴えた「人材確保」については、医療・介護従事者に加え、地域での多職種連携を推進するための人材、行政が策定した医療・介護計画の実行・管理を担う人材の育成や確保も重要との指摘があった。
人材確保以外の使途では、医療・介護の連携に必要なICT化に配分すべきとの声も多く上がった。厚労省の渡辺由美子医療介護連携政策課長は、新基金の交付事業の検討について「この会議の議論に沿っているかが重要になる」との考えを示している。
新基金の今後のスケジュールは、9月に告示される総合確保方針を基に、各都道府県が「都道府県計画」を策定する。そこで示された事業に対し厚労省が検討を行い、新基金の交付先を絞り込む。10月には交付先を内示し、11月には決定、12月以降は総合確保会議で交付状況の検証などを行う予定となっている。
●「都道府県と市町村の間で整合性を」
同日はこのほか、医療計画を策定する都道府県と介護保険事業支援計画を策定する市町村のスムーズな連携を求める声が複数委員から上がった。
今村聡委員(日医)は医療計画が2次医療圏単位、介護保険事業計画は市町村単位という圏域の違いなどを踏まえ、「両計画の一体的な運用は大事。整合性をとってもらいたい」と訴えた。大西秀人委員(高松市長)は「総合確保方針に基づき計画を策定する際には、医療と介護の連携における都道府県と市町村の役割分担を明確にしてほしい」と要請した。
【記者の眼】既に第6次医療計画と次期介護保険事業計画の策定が進行中ということもあり、現段階では「総合確保方針」の実効性は未知数だ。複数の委員が指摘したように、医療と介護、都道府県と市町村における連携と役割分担の方向性をどこまで示せるかがカギとなりそうだ。(T)