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【識者の眼】「地域包括を謳う病棟で『ときどき入院 ほぼ在宅』を」仲井培雄

No.5223 (2024年06月01日発行) P.43

仲井培雄 (地域包括ケア病棟協会会長、医療法人社団和楽仁芳珠記念病院理事長)

登録日: 2024-06-03

最終更新日: 2024-05-28

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新型コロナが「2類相当」から「5類」に移行し、2024年度はポストコロナの日常となったが、政情不安や温暖化による物価高騰・光熱費上昇と、人口減少や働き方改革による人手不足は深刻である。

一方、地域包括ケア時代の患者像は、高齢虚弱“multimorbidity(以下、「マルモ」)患者”が主となる。高齢で複数疾患を有し、ADLと栄養状態、認知機能が低下し、ポリファーマシーになりやすい。リハビリテーション(以下、「リハ」)は廃用症候群・認知症モデルが主となり、当協会提唱の補完代替リハは重宝される。エビデンスに基づく介入は困難なため、成果は人生の最終段階における意思決定支援(ACP)や多職種カンファレンスから導かれた患者のQOL向上となる。地域包括ケア病棟(以下、「地ケア病棟」)を有する病院は、このような患者のポストアキュートやいわゆるサブアキュートを、病棟で受け入れる、在宅でみる地域診療拠点として輝く道を進む。

■地ケア病棟が地域包括ケアシステムの要であることは変わらない

2024年度トリプル改定について私見を述べる。地ケア病棟入院料増額を含むプラス改定を素直に感謝したい。改定財源の多くが賃上げに充てられる他に、医療介護DXや医療措置協定等を伴う平時の感染症対策が推進される。地域包括ケアシステムの深化・推進に欠かせない高齢虚弱マルモ患者対策の足固めも行われる。地ケア病棟を有する病院のかかりつけ患者を支えるために、協力医療機関と介護施設との連携強化が評価され、その地ケア病棟を支えるために、在宅患者支援病床初期加算の救急搬送と下り搬送が評価される。改定された3つの入院料通則(栄養管理の基準明確化、ACPの推進、身体拘束の最小化)とリハ・栄養管理・口腔の一体的取組を拠り所にした「ときどき入院 ほぼ在宅」が、地ケア病棟入院料の41日目以降の逓減制を持って実装されると理解した。QOLを成果とする高齢虚弱マルモ患者への退院支援強化は急務となる。

2023年度の中医協での審議は高齢者救急への対応が焦点となった。救急搬送は年々増加し、中でも75歳以上の高齢者の軽症・中等症搬送が増えて、症状・症候・診断名不明確、すなわち高齢虚弱マルモ患者が多くなった。そこで急性期一般病床の生活支援に対する不安と期待、地ケア病棟の2次救急への期待と不安、さらに高次救急病院からの下り搬送の受け入れが議論された。地ケア病棟の救急患者直入が5.7%と低く、看護単位も13対1のため、高齢者救急とケアを兼ね備えた病棟の必要性が謳われ、地域包括医療病棟(以下、「地メディ病棟」)の創設となった。

地メディ病棟は、10対1看護や史上初の介護福祉士、専従POST2名以上、専任管理栄養士1名等が配置され、多職種協働を育む。24時間救急搬送を受け入れ、緊急入院や下り搬送の直接入棟は15%以上、平均在院日数は21日以下、ADLは95%以上維持・向上とされる。包括算定はDPCに準じ(手術やリハは出来高)、重症度、医療・看護必要度は急性期一般4に準ずる。在宅復帰率は80%以上で、分子に地ケア病棟は含まれず、回復期リハ病棟と機能強化型以上の老健等が含まれる。自院一般病棟からのポストアキュートは5%未満とされる。これをもって、地メディ病棟の受け入れは高齢者救急や緊急手術が、退棟先は回復期リハ病棟と介護施設、自宅が優先され、治しまたは支える高齢者急性期医療を提供することとなる。

2024年度改定を迎えても、地ケア病棟が地域包括ケアシステムの要である。地メディ病棟はそのうちの高齢者救急を進化させた病棟となる。急性期一般病棟や地ケア病棟からの移行が見込まれているが、これから地メディ病棟と各種病棟との組み合せ事例が集積され、地域医療構想での立ち位置も決まる。「ときどき入院 ほぼ在宅」を掲げる病院が、安心して持続可能性を追求できるように、地ケア病棟と地メディ病棟をともに育てて頂きたい。

仲井培雄(地域包括ケア病棟協会会長、医療法人社団和楽仁芳珠記念病院理事長)

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