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【識者の眼】「エビデンスに基づいた診療報酬改定後の検証を望む」松村真司

松村真司 (松村医院院長)

登録日: 2024-06-14

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2024年度の診療報酬改定が6月1日に施行された。今回の改定では、施行時期がこれまでの4月1日から6月1日に後ろ倒しになったことで、電子カルテやレセコンをはじめ各医療機関での準備期間が長くなり、改定作業に伴うメーカーの負担は軽減されたようである。しかし、改定後しばらくは様々な混乱が現場にもたらされるのもいつものことである。期の中途で凍結され、その後廃止された事項として、2018年度改定における「妊婦加算」1)は記憶に新しいし、古くは「外来管理加算の5分ルール」2)や「後期高齢者終末期相談支援料」3)など、混乱をまねいた挙句に、次の改定で廃止されたものも少なくない。

診療報酬改定が現場に与える影響は大きい。この影響力を用いて、各医療機関を政策に沿って誘導すること自体を否定するものではないが、その目的は患者や国民に利益を与えるものになるべきである。特に、これまで行われていた診療行為に新たな変化を生む場合には、その目的達成のために診療現場へ与える影響は十分事前に検討した上で行われるべきである。

今回の改定において話題となったものの1つが、特定疾患療養管理料の対象疾患から、生活習慣病である糖尿病、脂質異常症および高血圧が除外され、代わりに生活習慣病管理料(Ⅱ)が新設されたことである4)。もちろん、これらの「生活習慣病」は現在の慢性疾患の診療において大きな比重を占めており、今後の医療支出に与える影響も大きなものであることには異論はない。だからこそ、今回の改定が今後どのような効果を持つかの検証は必須であると考える。

このような政策がアウトカムに与える影響を検証するヘルスサービス研究は、近年大きな進歩を遂げている。また、今回の改定ではこれまでの外来データ提出加算に加え医療DX推進体制整備加算が導入され、さらなる大規模データベースの構築も期待できる。これらのデータベースと現場からのインプットを加えることで、今回の診療報酬改定が与える医師患者関係、患者のアウトカムへの影響もふまえた費用対効果はぜひ検証して頂きたい。

診療報酬改定のたびに振り回されてきた現場からは、エビデンスに基づいた検証が行われ、次回以降よりよい改定が行われることを期待したい。

【文献】

1)厚生労働省:第404回中央社会保険医療協議会総会;〈妊婦加算の概要〉. 総-1参考.(2018年12月19日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000460129.pdf

2)厚生労働省:第169回中央社会保険医療協議会総会;平成22年度診療報酬改定における主要改定項目について. 総-1.(2010年2月12日)
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/04/dl/s0422-4b.pdf

3)厚生労働省:第130回中央社会保険医療協議会総会;答申書(後期高齢者終末期相談支援料等の凍結について).(2008年6月25日)
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/06/dl/s0625-5k.pdf

4)厚生労働省保険局医療課:令和6年度診療報酬改定の概要【外来】(2024年3月5日版).
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001218897.pdf

松村真司(松村医院院長)[慢性疾患指導管理料

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