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地域医療構想、4月から策定開始 - 医療界からは「病床削減」「診療報酬とのリンク」懸念 [2025 年の医療提供体制]

No.4744 (2015年03月28日発行) P.7

登録日: 2015-03-28

最終更新日: 2016-11-21

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【概要】2025年の医療提供体制構築に向け地域医療構想が4月から策定される。医療機関の自主的な取り組みが重視されるが、医療界からは「病床削減につながる」との懸念も出ている。


厚生労働省の「地域医療構想策定ガイドライン(GL)等に関する検討会」(遠藤久夫座長)が18日、報告書を取りまとめた。厚労省は3月中に関係省令とGLを都道府県に通知。都道府県は2025年に目指すべき医療提供体制を「地域医療構想」として策定し、医療計画に反映して構想実現を図ることになる。以下、概略と策定プロセス(別掲)を紹介する。

●10年後の医療需要と医療提供体制を検討
地域医療構想を策定する「構想区域」は、二次医療圏を原則として、人口規模や患者の受療動向などを勘案して設定。医療需要については、昨年スタートした病床機能報告制度で有床の医療機関が都道府県に報告している病床の機能区分(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)ごとに推計する。
算出法は、「2025年の医療需要=2013年度性年齢階級別構想区域別の入院受療率×構想区域の2025年の性年齢階級別推計人口」とした。入院受療率に関しては、その基礎となるデータ(レセプトデータ、DPCデータ、人口推計、患者のアクセスマップなどを想定)を厚労省が夏までに示す。慢性期の医療需要に関しては在宅医療の需要と一体的に推計するが、療養病床の入院受療率は全国で最大約5倍の差があることから、最小値に近づけるための目標も構想区域ごとに立てることとした。
次に、10年後の医療需要を引き受ける医療機関と病床を現在の医療提供体制を基に検討。高度急性期と急性期は他の構想区域での提供も検討する一方、回復期と慢性期は区域内で完結させる。
必要病床数は、各機能区分の病床稼働率を高度急性期75%、急性期78%、回復期90%、慢性期92%に設定し推計。さらに、必要病床数と直近の病床機能報告制度による機能区分ごとの集計数を比較し、その差を埋めるための施策も検討する。

●医療機関の自主的な病床転換に期待
地域医療構想策定後は、2025年の構想区域ごとの必要病床数が把握できることから、各医療機関には地域における自院の役割の明確化など、病床の機能分化・連携の自主的な取り組みが求められる。
また都道府県は構想区域ごとに、医療関係者や医療保険者が参加する「地域医療構想調整会議」を設置し、構想の実現に必要な協議を行う。GLは調整会議を構想策定段階から設置することが「適当」とした上で、病床の機能分化・連携の進捗状況を共有、構想区域単位で必要な調整を行うこととした。
報告書ではこのほか、病床機能報告制度で有床の医療機関が報告する情報の国民への公表のあり方も提示。公表範囲は「構造設備や人員配置等に関する項目は原則すべて」「具体的な医療の内容に関する項目は、原則大項目のレセプト件数のみ」とした。
中川副会長「病床転換は強制ではない」
GL取りまとめを受け、日本医師会は翌19日、都道府県医師会の担当者向け説明会を実施。厚労省の北波孝地域医療計画課長がGLの概要を説明した後、中川俊男日医副会長が「日医の取り組み」として解説を加えた。質問に立った各担当者からは、病床削減につながるとの指摘や病床機能報告制度と診療報酬との切り離しを求める声などが上がった。
中川副会長は2025年の医療機能区分ごとの必要量の推計について、「あくまで地域の実情を踏まえて推進することが示されている」とした上で、「病床の転換は強制ではなく医療機関の自主的な取り組みによる判断」と地域医療構想の狙いを強調。病床削減につながる仕組みとの指摘については、「都道府県知事には、将来の必要量に報告された病床数を(強制的に)一致させる権限はない」と説明した。
医療需要の推計にあたり、病床区分の目安に診療報酬の点数が医療資源投入量として用いられるが、病床機能報告制度と診療報酬が今後リンクする可能性について中川副会長は、「病床機能報告制度を診療報酬の7対1削減のために使わせては絶対にいけない」と牽制。「そうさせないために医療資源投入量から入院基本料は除外させた」と説明し、「急性期削減という診療報酬の流れによって、ゆっくりと収斂していく医療提供体制の変化に水を差さないでほしいという思いがある」との考えを示した。

【記者の眼】地域医療構想を医療費抑制のツールと見る向きは多い。しかし、厚労省の北波課長は「医療費とは別のフェーズ」とし、診療報酬と切り離して2025年の医療需要の推計手法などを検討したと強調した。(T)

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