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【識者の眼】「生活習慣病の診療報酬改定に翻弄される患者」山口育子

山口育子 (認定特定非営利活動法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)

登録日: 2025-01-24

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認定特定非営利活動法人ささえあい医療人権センターCOML〔コムル〕(以下、「COML」)は、患者の自立と主体的な医療参加をめざして1990年から活動をはじめ、現在35年目の歩みを進めています。日常の活動の柱は電話相談で、1本平均40分かけての相談をこれまで7万件以上対応してきました。

その電話相談で、2024年度診療報酬改定に関係して増えている内容が、生活習慣病に関する医療費の問題です。これまで脂質異常症や高血圧症、糖尿病で診療所や200床未満の病院を受診すると、「特定疾患療養管理料」か「生活習慣病管理料」のいずれかが請求されていました。「特定疾患療養管理料」はいわゆる慢性疾患の患者を診た場合の管理料で、上記3疾患以外も対象になっています。診療所が225点、100床未満の病院が147点、100床以上200床未満の病院が87点で、月2回請求が可能です。この管理料を請求している患者に薬を処方すると処方料や処方箋料に加算もつけられます。

一方、「生活習慣病管理料」は上記3疾患に限定され、検査や注射等が包括され(2022年度に薬に関する包括が外れました)、脂質異常症570点、高血圧症620点、糖尿病720点で、月1回請求が可能という点数でした。どちらかというと生活習慣病のほうが1回分の請求は高くなるので、特定疾患療養管理料を請求している診療所や200床未満の病院が多かった印象です。

ところが、2024年度改定でこの3疾患は特定疾患療養管理料の請求ができなくなり、生活習慣病管理料に限定されました。しかも、生活習慣病管理料はⅠとⅡにわけられ、Ⅰは脂質異常症610点、高血圧症660点、糖尿病760点で、検査と注射等が包括されます。Ⅱは3疾患とも333点で、検査や注射等は包括されていません。糖尿病でインスリンの自己注射をしている患者は、在宅自己注射指導管理料が請求されるので、生活習慣病管理料の対象にはなりません。そして、Ⅰ、Ⅱいずれも外来管理加算は請求できなくなり、薬の処方は28日以上かリフィル処方箋が推奨されています。

このような改定の結果、これまでより1回分の医療費の請求額が1000円前後増えたり、検査や注射を受けていないのにⅠが請求されていたり、療養計画書の作成のためとの説明がなくアンケートと称して生活上のことを尋ねられて「国から決められたアンケートと言われたけれど、それはいったい何の目的?」といった相談が数多く届いているのです。これまで生活習慣病を請求されていて、検査や注射を受けていなくてⅡになった患者は医療費の負担が少なくなりますが、そちらの声はほとんど届きません。患者が翻弄されているのが現状です。

山口育子(認定特定非営利活動法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)[診療報酬改定][生活習慣病]

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