日医工、小林化工の後発品品質不祥事(2021年)以来、いまだに後発品の欠品、不足が続き、出口が見えない。供給不安の解消にあとどれくらいかかるのか? 厚生労働省も今回の不祥事や供給不足を受け、薬機法改正で安定供給体制管理責任者の設置義務や供給状況報告の届出義務化、需給モニタリングなどを進めようとしている。さらに、品目統合や製造ラインの刷新へ向けての基金等も準備するという。
確かに後発品の供給不足解消へ向けての政策は整えられつつある。しかし、それを実行するのが大変だ。まずヒト、カネが圧倒的に足りない。特に後発品企業の製造ラインや品質管理に要する人材が足りない。また、老朽化した製造ラインを更新し、増産体制を整備するカネも足りない。2024年度補正予算では70億円を計上、2025年度予算では後発品供給支援基金(5年間)を準備するというが、この規模の額では到底足りない。
そもそも後発品の品目数が多すぎる。1つの成分に何社もが群がり、過当競争を引き起こしている(アムロジピンなどは20数社が群がっている)。政府も「1成分当たり5品目」などを掲げ、その絞り込みを計ろうとしている。また、成分数自体も多すぎる。その理由は、かつてゾロ新と言って、ちょっとだけ化学式を変更した薬までどんどん承認したツケがいま回ってきている。1980年代のブロックバスターもいまだに舞台の上に残っている。医薬品の新陳代謝を加速しなければ薬の数は減らせない。
後発品の製品改良もほどほどにしてほしい。口の中で溶ける口腔内崩壊錠をつくって製品改良をしたつもりになっているが、一包化が普及した現在は、そんな小手先の製品改良など意味がない、通常錠だけで十分だ。通常錠にするだけで製造ラインがシンプルになり効率化される。包装も過剰包装だ。吸湿性の高い錠剤以外はPTPシートなどいらない。米国などは裸錠のボトル詰めが基本だ。また、テレビコマーシャルなどいらない。こうすることで後発品企業の生産ラインをスリム化し、品質重視の質実剛健な企業体質に変えていくべきと考える。
さらに、後発品企業の業界再編が必須だ。後発品企業はどこも中小企業で、企業数は約190社もある。これらの企業がバラバラに体質改善をしていては、いくらヒト、カネがあっても足りない。企業再編を通じて、20〜30社に資源集中をはかり、大規模化、品目の絞り込み、効率化して、非常時の生産余力を蓄えてほしい。
企業再編にもいくつかのパターンがある。企業買収によるM&A方式、屋号統一によるコンソーシアム方式、もう1つはファンドによるホールディングカンパニー方式、または卸が川下からの製造企業の統合を行う方式だ。
しかし、企業再編や製造ライン統合、更新には時間がかかる。今回、国は後発品の安定供給のための集中改革期間を5年としているが、本当に5年で現状の供給不安が解消するのだろうか? 10年はかかるのではないか?
武藤正樹(社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ理事)[ジェネリック医薬品][供給不足][後発品供給支援基金]