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「医療通訳」の質と量確保へ、一層の情報支援を [お茶の水だより]

No.4759 (2015年07月11日発行) P.9

登録日: 2015-07-11

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▼東京五輪・パラリンピックに向けて、政府は2020年までに年間訪日外国人旅行者数2000万達成という目標を掲げた。観光庁によると、外国人旅行者の滞在中の予期せぬ病気・怪我の発生率は約4%。そうなれば、単純計算で年間約80万の患者が発生することになる。旅行者の大半は台湾、中国、韓国、タイなど非英語圏から来た、日本でコミュニケーションを取るのが困難な人たちだ。言葉の壁については約212万人に上る在留外国人にとっても深刻な問題で、必要となるのが「医療通訳」サービスである。
▼関係省庁や地方自治体で対応が進んでいる。例えば愛知県では、県市町村と医療関係団体、県内大学が協働で通訳派遣、電話通訳、文書翻訳サービスを行う「あいち医療通訳システム」を2012年度から運用。通訳派遣では、医療機関からの依頼で医療に関する基礎知識や通訳技術など一定レベル以上のスキルを持つ通訳者を派遣しており、英、中、ポルトガル、スペイン、フィリピンの5言語に対応している。
▼人命に関わる医療の通訳に関しては、“量”の確保のみならず“質”の認証が欠かせない。愛知県では県内大学の協力を得て各言語の通訳者を養成し、試験合格者を登録。「外国人患者受入れ医療機関認証制度」を実施する日本医療教育財団は、医療通訳の研修カリキュラムと指導要領を公開している。
▼6月に閣議決定された『日本再興戦略』は、外国人受入れ能力のある病院を「日本国際病院(仮称)」と位置づけるとしており、国家戦略特区の一部病院では外国人医師が外国人患者を診療できるよう規制が緩和される。地域医療を担う一般の病院・診療所も外国人を診る機会が増えると予想され、日本医師会には体制が取れない自治体のためにも、ICT利活用、関係団体との連携による情報支援を期待したい。

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