医療経済研究機構の西村周三所長(写真)は20日、都内で開かれたシンポジウム(医療経済フォーラム・ジャパン主催)で講演し、「現存する建物や元気な高齢者という資産を有効に活用することで、意外なほど経済は成長する」と述べ、医療・介護提供体制や経済政策に対する「発想の転換」を訴えた。
「発想の転換」が求められる問題として、西村氏は空き家の活用に言及。「地域に十分な医療・介護を効率的に提供することを考えると、1施設に1機能ではなく、住まいの機能を維持しながら同時に別の施設としても使っていくことが求められる」と指摘した。
医療機関についても、「規模や病床数は今後、縮小に向かわざるをえない。今よりもっと高度で快適な施設を目指す地域があってもいい。しかし、現在の建物を修理し、さまざまな機能に転換する増改築もあっていいし、むしろそれが経営の安定を導く」との考えを示した。
西村氏は、同様の発想を「人」にも適用できるとし、働く若年高齢者の増加を指摘。「彼らの知恵や労働力を活用するために、医療・介護は何をすべきかを考えたほうがいい」と強調した。
講演の締めくくりに西村氏は、「国の政策としては医療費・介護費の抑制の方向性は堅持しつつ、全体としては医療から介護へ少しずつシフトする仕組みを考えなければならない」とした上で、「医師が地域の介護施設や住民とともにエンドオブライフケアのあり方を考えることで、結果的に住民の満足度を下げずに抑制に成功するのではないか」と述べた。