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となりの人間国宝さん [なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(136)]

No.4842 (2017年02月11日発行) P.72

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2017-02-11

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  • 義太夫の竹本住太夫師匠と能シテ方の大槻文蔵先生、人間国宝お二人のお話を2日続けて聴く機会があった。お二人とも70年もの長きにわたって、ひとつの芸道に打ち込んでこられた大名人である。芸のジャンルだけでなく、住太夫師匠は豪快で大槻先生は繊細、と雰囲気もずいぶん違うが、おっしゃることには共通点が多かった。

    まずは修業の厳しさだ。どちらの芸道も口伝が基本である。録音機器もない時代、稽古には相当な集中力が要求されたし、こんなこともできないのかと手の出る師匠もおられたそうだ。才能も必要だろうけれど、それ以前に、好きでないととても続けることなどできないことを強調しておられた。

    もう一点、これは少し意外だったのだが、芸には人柄が出る、ということだ。義太夫も能も、歴史ある古典芸能であり、言ってみれば自由度の少ない芸事である。それでも、一流の芸を演じるためには、なによりも優れた人間性が重要であるらしい。

    古典芸能は型のあるものを極めていく、研究は新しいことを追求していく、という根本的な違いがある。打ち込んできたのかと訊かれたらむにゃむにゃではあるが、研究歴も30年を超えてくると、詮ないこととはいえ、どうしても比べたくなってしまう。

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