わが国の認知症者は462万人,認知症の予備軍である軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)者は400万人と推計されている。本年1月には「認知症施策推進総合戦略─認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて」(新オレンジプラン)が公表され,国家戦略として認知症問題への取り組みがなされることとなった。
認知症診療の入り口は,正確な早期診断である。本特集では,まず認知症との鑑別で最も重要な老年期のうつ病とせん妄を取り上げた。両者はともに,老年期に高頻度に出現し,認知症に合併することも多く,認知症とは異なる治療戦略を必要とする。また,特発性正常圧水頭症は,根本的治療の可能性がある認知症の代表的疾患である。日常臨床において,これらの疾患や病態がより身近なものとなれば幸いである。
1 せん妄と認知症
熊本市こころの健康センター 長谷川典子
熊本大学大学院生命科学研究部神経精神医学分野教授 池田 学
2 老年期うつ病と認知症
慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室講師 田渕 肇
慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室教授 三村 將
3 根本的治療の可能性がある認知症─特発性正常圧水頭症
大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室講師 數井裕光
大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室 吉山顕次