てんかんは慢性疾患だからこそ発病初期の診断・治療方針が重要で,良好な医師・患者関係を保つためにも,二次,三次医療機関を有効に利用したい
医療費や生活費の公費負担制度や就労支援など,患者の生活を支える制度を紹介することも必要
航空法を除き,資格や免許の取得は病状に応じて認められる。2年以上発作が抑制されていれば運転適性を有する
キュブラー・ロスは末期患者が死を“受容”するまでの過程を,否認,怒り,取引,抑うつ,受容の5段階にわけたが,このような心理的過程は死に対してだけではなく,致死的な病気や難病などを発病した際の病気の“受容”にも共通した過程である。てんかんは一部のてんかん類型を除けば致死的病気や難病ではないが,診断を受けてから“受容”までは同様の心理的過程を経ると言われている。患者の“受容”は予後と密接に関係しており,良好な医師・患者関係がその基礎をなす。
発病当初のてんかんの知識は,患者も一般市民と同じである。誤った考えや知識を持っていると考えるのが妥当であり,「まさか自分が……」と病気を否認する。病名を聞いた瞬間,「頭の中が真っ白になり,その後の医師の説明は何1つ覚えていない」と振り返る患者は少なくない。否認の心理的過程である。一方,セカンドオピニオン目的で当院を受診した患者の多くは,原因や診断,治療の見通しといった,医療に関する事項を具体的に知りたいと考えており,病気に対して前向きである。また,就業上の注意点,自動車の運転,妊娠・出産など,社会生活に関する幅広い事柄についても知りたいと考えている。診断に不満であった患者も,診察が終わる頃には前向きになっている。
てんかんは比較的長期の治療を要する疾患だけに,医師・患者関係は良好に保つ必要がある。そのためには,発病当初の対応が重要である。診断を受け入れきれない患者や,当初の治療が効果を上げない場合には,二次あるいは三次医療機関を紹介することが解決の1つのカギを握る。紹介した結果,患者が納得のいく情報提供を受けたり,治療の意義や目的に納得することは,翻って紹介医との間の信頼関係の構築につながる。患者に対して必要なときにはいつでも二次,三次医療機関を紹介することは重要である。
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