▶その回答は驚くべきものだった。今や社会問題ともなっているSTAP細胞論文に関する数々の疑義に対し、14日に理化学研究所が開いた中間調査発表会見。論文中の画像の加工を認めた筆頭著者の小保方晴子氏は、「やってはいけないことだと思っていませんでした」と所内の調査委員会に釈明したという。
▶STAP細胞の登場は華々しかった。当初は、マウスの成熟細胞を圧迫したり酸性溶液に浸けるなどの簡単な方法で、受精卵に近い状態にリセットできるとしていたが、発表直後からインターネット上で疑義が指摘されるほど、論文の内容は杜撰なものだった。14日の会見で野依良治理事長は、「科学社会の信頼性を揺るがしかねない」と謝罪するとともに、問題の論文には共著者が14人いることを指摘し、「1人の未熟な研究者が膨大な研究結果を集積したが、それが杜撰で責任感に乏しかった。研究チーム内の連携に不備があったと思う」と話した。
▶論文著者の定義には国際ルールがある。国際医学雑誌編集者委員会は、論文著者について、①研究の構想とデザインか、データの取得か、データの分析と解釈、②論文草稿の執筆、あるいは重要な知的内容への批判的な改訂、③出版原稿への最終的な同意―の3項目を同時に満たすことを求めている。科学研究不正に詳しい山崎茂明氏(愛知淑徳大人間情報学部教授)は、「多くの不正行為事例を調べると、共著者が批判的に論文を読み、必要に応じて調査データを確認するといった、著者としての責任を果たしていれば防止できたケースが多く見られた」「不正行為事例をなくすためには、オーサーシップをいかに適切に運用するかが研究者たちに求められている」とし、著者の定義の国際ルールを遵守する必要性を指摘する(日本医事新報.2013;4631:24)。
▶調査委は今後、①研究不正の有無、②STAP細胞の再現性、③論文の取り扱い、④今後の理研の対応―について検討し、最終報告書をまとめる。日本の科学研究への信頼を取り戻すためには、これらの課題に加えて、論文における著者の役割を明確化し、なぜ、国際的に著明な共著者が内容の正当性を点検できなかったのかを検証すべきだ。共同研究の普及などにより論文共著者が増加する現状に即した再発防止策を講じるために、必要な過程である。