□急性喉頭蓋炎では急激に気道閉塞に至る可能性があり,緊急対応を要する。身体所見,頸部軟線検査,経鼻喉頭ファイバーにより診断する。必要であれば直視喉頭鏡で確認するが,呼吸状態を悪化させないように注意する。
□耳鼻咽喉科へコンサルトしつつ,救急科医は気道確保の準備を行う。加湿した酸素の吸入,輸液,呼吸心拍監視,抗菌薬の経静脈投与を行う。
□気管挿管に際してはファイバー喉頭鏡下で行うのが望ましい。挿管困難となる可能性が高く,輪状甲状靱帯切開または穿刺を行えるように準備しておく。
□急性喉頭蓋炎などにおいて,仰臥位で呼吸困難を認める患者をCTに運んではならない。
□Centor基準では,扁桃の白苔,有痛性前頸部リンパ節腫脹,咳嗽がないこと,発熱の4つの項目のうち,満たすものが1つ以下であれば抗菌薬投与は不要であり,2つ以上満たす場合には適宜,溶連菌迅速検査を組み合わせて抗菌薬投与を決定することを推奨している。
□起炎菌として最も多いのは,A群β溶血連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)であり,成人の咽頭炎のうち5~15%,小児では15~30%を占め,急性リウマチ熱や糸球体腎炎を稀に発症する。Centor基準の陽性項目数が違うと,溶連菌迅速検査の感度が異なる(61~97%)。
□ウイルス性咽頭炎である場合,多くは特異的な検査は不要である。インフルエンザ,伝染性単核球症,急性レトロウイルス感染症は例外にあたる。
□扁桃周囲膿瘍の診断は病歴と身体所見のみで可能だが,疑わしい場合には造影CT,口腔内超音波検査が有用である。
□咽後膿瘍を疑った場合は造影CTが確定診断となる。椎体前面の腱膜の前方に位置し,頭蓋底から気管分岐部付近にまで及ぶ潜在空間を咽後腔と呼ぶ。咽後腔はリンパ節群を有し,鼻咽頭,アデノイド,後方の副鼻腔などからのドレナージを担っている。発症早期では咽後腔に非膿瘍性の反応性浮腫を反映した所見を認め,膿瘍を形成するとリング状増強効果を伴う。
□伝染性単核球症では症状出現後1週間以内では25%において異好抗体検査で偽陰性となり,10%の症例は終始陰性が持続する。
□伝染性単核球症である場合は,アモキシシリンやアンピシリンを投与すると大丘疹性紅斑を生じる。
□急性冠症候群の放散痛として咽頭痛を生じることが稀にある。疑った場合にはまず心電図検査を行う。
□ウイルス性咽頭炎であればほとんどの場合投薬は不要であるが,インフルエンザ感染症と診断した場合には抗インフルエンザウイルス薬を投与する。
□溶連菌感染症では,抗菌薬治療を行わない場合,感染症状は7~10日間持続する。抗菌薬を投与すると感染症状持続期間を24時間に短縮でき,ほとんどの合併症を予防できる。
□扁桃周囲膿瘍では,抗菌薬投与,穿刺吸引,切開排膿,ドレナージを行う。稀に扁桃摘出術を行う。
□咽後膿瘍では,輸液を開始し抗菌薬を投与する。培養では嫌気性菌を含む複数菌を認め,主な好気性菌はS. viridans,S. pyogenes,Staphylococcus aureusであり,主な嫌気性菌はバクテロイデス属,ペプトストレプトコッカス属である。早急に耳鼻咽喉科へコンサルトすべきであり,多くの場合は経口的または経頸的な切開排膿を要する。
□レミエール症候群1)とは,Fusobacterium necrophorumなどの嫌気性菌による咽頭領域の膿瘍から派生する内頸静脈血栓症および全身性塞栓症である。1936年にLemierreが報告し,近年再び注目されている病態である。嫌気性菌・好気性菌ともにカバーする抗菌薬を選択し,3~6週間投与する。必要に応じ抗凝固療法を追加する。
1) Syed M. I, et al:Laryngoscope, 2007;117(9): 1605-10.
▶ Rupali NS, et al:Tintinalli's Emergency Medicine. 7th ed. McGraw-Hill, 2010, p1157-9.
▶ 鈴木賢二, 他:CLIENT 21 21世紀耳鼻咽喉科領域の臨床No.19感染症. 馬場駿吉, 編. 中山書店, 2000, p285-300.
▶ Pines JM, et al:Evidence-Based Emergency Care:Diagnostic Testing and Clinical Decision Rules. 2nd ed. John Wiley & Sons, 2013, p238-42.
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