□厚生労働省の人口動態調査によると,2005~2014年の10年間における自然毒による食中毒患者数は1056人であった(年平均105.6人)。このうち,きのこ中毒は497人(年平均49.7人),フグ中毒は357人(年平均35.7人)で,この10年間での死亡者数はそれぞれ10人と13人であった。
□自然毒による食中毒として世界的に最も多いシガテラ中毒は,サンゴ礁海域に生息する南海魚を摂取することで起きる食中毒の総称である。日本では沖縄に多いが,2014年に報告された患者数は16人である。
□何を食べたか(きのこ,フグ,南海魚など),どの部分を食べたかを聴取する。フグ毒は卵巣と肝臓に多く,ついで腸と皮膚に多い。筋肉や精巣にはほとんど含まれていない。
□主要な毒成分はアマトキシンである。症状は,食べてから約12時間(6~24時間)で現れる。初めは,腹痛,嘔吐,非常に激しい水様下痢といった消化器症状で,脱水により電解質異常が起こる。3日前後してウイルス性肝炎に似た肝障害を起こし,肝性昏睡に至ることもある。さらに,出血傾向から播種性血管内凝固(DIC)をきたす。
□主要な毒成分はテトロドトキシンである。最初は,口唇や舌,指先のしびれから始まり,嘔吐することもある(Ⅰ度)。次に,四肢の知覚鈍麻が進み,軽度の運動麻痺が出る(Ⅱ度)。続いて運動がまったくできなくなり,深部腱反射も消失する。呼吸困難も出現し,意識ははっきりしているが,呂律難となる(Ⅲ度)。最終的には呼吸筋麻痺から呼吸停止となり,意識障害,心停止となる(Ⅳ度)。
□主要な毒成分はシガトキシンである。腹痛や嘔吐,下痢といった消化器症状,全身の痛み,脱力,めまい,意識障害,ドライアイスセンセーション(冷たいものに触れたときのようなピリピリした痛みなどの知覚異常)といった神経症状,また,徐脈や房室ブロック,低血圧といった循環器症状など多彩な症状を呈する。
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