□特発性拘束型心筋症は,①硬い左心室,②左室拡大や肥大の欠如,③正常または正常に近い左室収縮能,④基礎疾患が不明,と定義されている。ただし,アミロイドーシスや心ファブリー病のような特定心筋症,あるいは放射線照射やアントラサイクリン系薬剤の副作用などにより同様の病態を示すこともあり,これらは二次性拘束型心筋症として鑑別が必要である。
□一部の特発性拘束型心筋症では,遺伝子変異として拡張型心筋症,肥大型心筋症同様にサルコメア蛋白の遺伝子変異の報告がなされている。
□病態は,心室の拡張機能低下による心室拡張末期圧上昇に伴ううっ血である。ただし,拡張機能低下により心室流入血流量は低下し,心室収縮能が低下しはじめると容易に臓器低灌流所見を呈するようになる。
□軽症の場合は無症状のことがある。多くの症例で労作時呼吸困難が最初に自覚される。これは労作時の心拍数増加に伴い拡張時間が短縮することで左室流入血流量が低下し,心拍出量が十分には増えないためであると考えられる。
□浮腫,動悸,さらに進行すると起坐呼吸や全身倦怠感が出現する。他覚的所見として,頸静脈怒張,浮腫,肝腫大,腹水,Ⅲ音,Ⅳ音を認める。
□心電図:特異的所見なし。
□胸部X線写真:左房の拡大,進行すれば,右室や右房の拡大。
□心エコー:左室拡大および壁肥厚なく,左室壁運動が正常または正常に近い,左室流入血流速波形が拘束型〔拡張早期波(E波)増高・E波と心房収縮期波(A波)のピーク流速比増大(E/A>2),E波減衰時間短縮(<150msec),等容弛緩時間短縮(<70msec)〕,左房または両心房拡大や右室拡大,左室流入圧波形に呼吸性変動がない(収縮性心膜炎との鑑別)。
□心臓カテーテル検査:左室圧のa波増高,左室拡張末期圧上昇,左室最大陰性dP/dt低下,左室圧下降脚時定数延長,左室圧曲線にsquare root signを認めることがある,冠動脈正常。
□心筋生検:しばしば心筋間質の線維化,心筋細胞肥大,心筋線維錯綜配列,心内膜肥厚。
1190疾患を網羅した最新版
1252専門家による 私の治療 2021-22年度版 好評発売中
PDF版(本体7,000円+税)の詳細・ご購入は
➡コチラより