皆さん,こんにちは。Dr.ヒロです。いつも通り,楽しく心電図の勉強をしていきましょう。今回の話題は,心電図上に現れるノイズ(noise)になります。これまでも散発的に取り扱ってきましたが,より総括的な解説をめざしたいと思います。
多少マニアックな話も含みますが,絶対におさえておくべき内容だと思います。では,スタートです!
心電計の基本性能とは,何でしょうか?端的に言うとすれば,体表面に貼った電極から心臓の活動を抽出し,最終的にデジタル波形として表示することです。理想的には,心臓の電気シグナルのみを拾えるのがベストです。ただ,もともと非常に微細な電流であり,現実には様々な種類の“雑音”も混入してきます。これが文字通りノイズと呼ばれるものになります。
ところで,類似の表現にアーチファクト(artifact)がありますよね? これも,心臓とは無関係に発生する一種の“偽信号”になります。細かく考え出すと難しいですが,アーチファクトのほうが,より広範(上位)な概念のようです。心電図に出現する“波形の乱れ”全般を指す,というのがオススメの理解です。
ノイズのほうはと言えば,主として電気的干渉に起因する非生理的信号であり,広義にはアーチファクトの一種とも考えられます*1。
ノイズの分類にはいくつかあって,何を“主体”に考えるかで異なります。主体となる1つは「心電計」であり,もう1つが「生体」です*2。後者は,「被検者」(ないし「患者」)と言い換えることもできます。
今回の解説では,「生体」を中心に考えるスタンスを採用しようかと思います。その上で,大まかに「外部ノイズ」と「内部ノイズ」にわけて議論していきます。ただ,一部には,どちらか一方だけに分類しきれない項目もあるため,その辺りはご了解下さい。
*1 両者を厳密に区別することができず,重複する部分もあるというのが現実です。
*2 この辺りの記載は,国内の一部書籍でも混乱が見られるようです。対象を間違えると,“内外”がおかしくなりますので,ご注意下さい。