□マイコプラズマは細胞壁を持たないものの,生物学的には完全な細菌である。
□至近距離における激しい咳により,飛沫中のマイコプラズマが下気道の繊毛上皮まで直接到達することで感染が成立する(飛沫感染に対する標準的予防策が有効)。
□感染細胞内に活性酸素を過剰に蓄積させ呼吸器粘膜を軽く損傷することのほかには直接的な細胞傷害性を持たず,マイコプラズマ肺炎の発症機構は宿主の免疫応答を介した「免疫発症」である。
□基本的には3週間程度で自然治癒する疾患であり,マクロライド耐性菌感染においても2日間程度の発熱の遷延はあるものの,それ以上の重症化傾向はみられていない。
□推測される現在の流行状況を図に示したが,肺炎の発症機構や薬剤耐性機構の詳細については文献1)2)を参照して頂きたい。
□発熱,咳,咽頭痛などの感冒様症状を呈するが,マイコプラズマは大量の細胞を破壊せず,分泌を亢進させないことから,基本的には鼻水や痰の少ない乾いた咳が特徴である。
□大量の鼻水や著しい咽頭発赤を認めた場合には,他の病原体による混合感染を考慮する。
□胸部X線単純写真にて他の肺炎と鑑別することは困難である。
□マイコプラズマは繰り返しヒトに感染するため,健常人の中にも既感染による抗体保有者が存在しており,単一血清の抗体価による判断には限界がある。このためマイコプラズマ感染確定診断のためには,少なくとも4日以上の間隔を空けたペア血清を得て,抗体価の変動を観察する必要がある。
□下気道の繊毛上皮が増殖の場であるマイコプラズマは上気道には必ずしも大量の菌体は存在せず,咳が弱い場合には下気道から菌が運ばれてこない。このため,急性期における診断法として推奨されている遺伝子あるいは抗原診断(表)を行うにあたっては,下気道に近い側をしっかり擦り取ることが重要である。
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