□咽頭炎は,急性咽頭炎,慢性咽頭炎,咽頭特殊感染症にわけられる。
□急性咽頭炎:アデノウイルス,エンテロウイルス,コクサッキーウイルスなどのウイルス感染や,A群β溶血性連鎖球菌(溶連菌),インフルエンザ菌などの細菌感染によるものが一般的である。
□慢性咽頭炎:急性咽頭炎の治癒が不十分な場合は慢性に移行することがある。喫煙,刺激性ガスや粉塵の吸入などの物理化学的な慢性的刺激も原因となる。加齢に伴う咽頭粘液分泌低下,気候的乾燥などの影響も受ける。
□咽頭特殊感染症:クラミジア,淋菌,梅毒トレポネーマ,結核菌などの特殊病原体の感染による。頻度は低いが,生活スタイルや社会環境の変化により一部では近年増加傾向が指摘されている。
□急性咽頭炎:咽頭痛,嚥下時痛,咽頭の腫れ,咽頭乾燥,異物感,耳放散痛,後鼻漏,咳嗽,喀痰,発熱などを呈し,全身倦怠感や頭痛を伴うこともある。
□溶連菌感染:特に学童期の小児(4~12歳)に好発し,成人例もあるが,3歳未満では稀である。咽頭痛,39℃以上の発熱に加え,口蓋の点状紅斑・出血斑,体幹と四肢の小さくて紅い発疹(発病1~2日目),イチゴ状舌(発病2~4日目)を認めることがある。成人例では特徴的症状を欠く。飛沫感染,接触感染も起こるため学校感染症に指定されているが,無症候性保菌者(小児の5~20%に存在)からは伝播しない。
□慢性咽頭炎:咽頭違和感,不快感,異物感などの慢性的持続が主体で,他に咳嗽,喀痰を伴うこともある。
□咽頭クラミジア:自覚症状のない無症候性感染が多い。症状が出た場合も急性および慢性咽頭炎に類似するため,症状による鑑別は困難である。オーラルセックスや飛沫で感染する。
□急性咽頭炎では,咽頭粘膜の発赤に加え,咽頭側索・咽頭後壁リンパ濾胞の腫脹,粘性の強い咽頭粘液分泌を認める(図)。口蓋扁桃,咽頭扁桃(アデノイド),舌扁桃の発赤腫脹を伴うこともある。
□溶連菌の同定には,旧来の細菌培養ではなく,イムノクロマト法を用いた溶連菌迅速診断キットが有用である。綿棒による咽頭粘液採取により5分以内に判定できる。
□慢性咽頭炎では視診上特徴的所見に乏しいことが多い。
□咽頭クラミジアも同様に特徴的所見を欠くが,クラミジアの迅速同定には感染局所からの検体(生理食塩水でうがいしたものなど)を用いたPCR法による検出が有用である。同じく局所検体を用いたEIA法による抗原検出,および血清抗体検査も可能である。
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