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良性発作性頭位めまい症[私の治療]

No.5258 (2025年02月01日発行) P.47

北原 糺 (奈良県立医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科学主任教授)

登録日: 2025-02-04

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  • 良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo:BPPV)は,クプラ結石症と半規管結石症が主たる病態である。クプラ結石症は,半規管膨大部が耳石付着により重力感受性を持ち,頭位・頭位変換に応じた一過性の回転性めまいと当該半規管由来の眼振が発現する。半規管結石症は,半規管内に浮遊する小片により膨大部が刺激され,頭位・頭位変換に応じた一過性の回転性めまいと当該半規管由来の眼振が発現する。50~70歳代の女性に多く,耳石の主成分が炭酸カルシウムであることから,更年期のカルシウム代謝異常との関連が指摘されている。

    ▶診断のポイント

    BPPVはめまい疾患の中で最も頻度が高い(50~70%)。型別による頻度順は,後半規管型2/3,外側半規管型1/3である。女性,高齢者に多い。後半規管型のめまいは「寝起き」「うなずき」で誘発され,眼振は「回旋性」である。めまい・眼振は患側下頭位で強まる。外側半規管型のめまいは「寝返り」「振り向き」で誘発され,眼振は「水平性」である。めまい・眼振は患側下・対側下ともに生じる。

    通常,めまいは回転性であるが,剝離した耳石量と患者本人の活動量との兼ね合いで,めまいの性状,程度は様々である。めまい・眼振には数秒~数十秒の潜時があり,頭位・頭位変換に応じて一過性に数分~十数分持続する。体動時の浮動感が年余にわたり持続し,頭位・頭位変換眼振のはっきりしない,慢性持続性のBPPVの存在が指摘されている1)。通常,耳鳴,難聴等の蝸牛症状,頭痛を含む中枢神経症状は随伴しない。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    BPPVは数週間~1カ月で自然治癒する予後良好な疾患である。まずは,めまいや不安に対する薬物対症療法を行う。数週間で症状が改善に向かわない場合,浮遊耳石置換法なる理学療法によって治癒を早める可能性がある。症状再燃を繰り返す場合,長期に症状が遷延する場合,就寝時に剝離耳石を三半規管に迷入させないように,30~45°の角度で頭部を挙上させる1)。執拗に持続する,あるいは頻繁に再発する頭位誘発性めまいのためにQOLを著しく低下させる症例に対して,中枢疾患の除外と責任半規管の同定を慎重に行った上で,半規管遮断術なる外科治療を選択する場合がある。

    WEBコンテンツ「外来で行うめまいの鑑別診断と対応 ステップ1・2・3」

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