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副鼻腔囊胞[私の治療]

No.5253 (2024年12月28日発行) P.52

太田伸男 (東北医科薬科大学耳鼻咽喉科学教授)

登録日: 2024-12-31

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  • 副鼻腔囊胞は副鼻腔の自然口の狭窄や閉塞によって副鼻腔内に分泌物が充満し,周辺組織の圧迫や破壊を生じる病態である。病因としては手術や外傷が多く,ほかに炎症性,先天性および特発性がある。

    ▶診断のポイント

    【問診】

    問診が重要で,副鼻腔の手術歴や外傷の確認がポイントである。

    【症状】

    症状は囊胞の発生部位によって異なる。最も頻度の高い上顎洞では,患側の頬部の疼痛,腫脹,発赤,歯痛,眼症状(眼球の上方への偏位,眼球突出,複視,視力低下など),頭痛を呈する。前頭洞では頭痛,下・外側方向への眼球偏位,前額部の疼痛,腫脹などが多く,篩骨洞では外側方向の眼球偏位が多い。また篩骨洞,蝶形骨洞では視力・視野障害をきたす。

    【視診】

    鼻内所見:急性副鼻腔炎や慢性副鼻腔炎に特徴的な膿性鼻漏やポリープは認めない。

    口腔所見:歯齦部の手術瘢痕と腫脹の有無,硬口蓋の突出,上顎歯の殴打痛の有無を確認する。

    眼所見:眼球突出と複視の有無を確認する。

    【画像所見】

    確定診断には画像検査が必須となるが,情報量としては軸位断,冠状断および矢状断を撮影することでCTが格段に優れている。画像では囊胞の位置,数,副鼻腔周囲骨の破壊の有無とその範囲,視器などの近接臓器への影響の有無を評価する。囊胞が多囊性である場合や囊胞内の組織構造の質的評価,頭蓋内や眼窩組織との位置関係の詳細な評価にはMRIが有用である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    囊胞に感染を伴い疼痛・腫脹などの急性期症状があればまず保存的治療を行う。副鼻腔囊胞の検出菌としては表皮ブドウ球菌,α連鎖球菌や嫌気性菌が多いことを考慮した薬剤選択を行う。症状がない場合や偶然発見された場合は経過観察もありうるが,手術治療の原則は囊胞開放術か囊胞摘出術である。

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