反回神経の障害により,一側あるいは両側性に声帯運動が障害をきたした状態を指す。一側性声帯麻痺では嗄声が,両側性声帯麻痺では呼吸困難が問題となることが多く,病態に合わせた対応が必要である。
喉頭内視鏡検査で声帯の一側あるいは両側性の運動障害を認める。声帯の運動障害の原因となる他の疾患がないことを確認する。喉頭筋電図で内喉頭筋の麻痺所見があれば確定診断となるが,検査が可能な施設は限られる。
特発性麻痺など,反回神経が残っている場合には自然回復することがあるので待機する。目安は6カ月で,その時点で麻痺と嗄声が遷延する場合は,喉頭形成術(声帯内方移動術,披裂軟骨内転術)や喉頭注入術を検討する。日本ではまだ普及していないが,自然回復の待機期間に一時的音声改善のために喉頭注入術を行う方法もある。
頸部・胸部の術後性麻痺で反回神経が切断された場合は待機する意味はなく,可及的速やかに音声改善手術を検討する。
音声治療は,声門閉鎖不全が軽度(嗄声が軽度)な場合には適応になることがあるが,そうでなければ無効である。
多くの場合,両側声帯が正中付近に固定されるため,呼吸困難を呈する。呼吸困難が高度の場合は気管切開を要する。気道拡大を希望する場合は声門開大術を検討するが,術後の嗄声が悪化することを説明しておく必要がある。
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