口内炎とは「口腔粘膜に発赤,腫脹,浮腫,アフタ,びらん,潰瘍,水疱,出血,白苔,角化,肉芽,壊死などを形成するが,奇形や腫瘍などによらない病変」とされ,アフタとは「白色の偽膜と周囲の紅暈が特徴的で,口腔粘膜に発生する円形ないし楕円形の,大きさは小豆大までの境界鮮明な炎症」と定義づけられる。原因は多種多様であり,薬剤や感染症,放射線照射などの医原性,また炎症性腸疾患や自己免疫疾患などの内科疾患,皮膚疾患が隠れていることもある。
まずは視診や触診,問診が重要である。問診では,契機,内服歴,既往歴,習慣や癖,食習慣,歯牙状態,随伴症状,経過,性生活などの情報収集が必要である。原渕ら1)が口腔咽頭潰瘍の鑑別疾患をフローチャートにしているので参考にする。視診や触診で壊死,肉芽,硬結,潰瘍堤を認める場合,また難治性の場合は悪性腫瘍の除外や診断の手がかりとなるため生検を行う。通常の口内炎は摂食時痛を訴える。自発痛を訴えるが,口腔粘膜に異常所見がみられない,かつ摂食時に痛みが軽快する場合は舌痛症を疑う。
感染症(ウイルス,梅毒,結核,真菌など),薬物(NSAIDs,メトトレキサート,抗菌薬,抗腫瘍薬など),自己免疫疾患(扁平苔癬,ベーチェット病,天疱瘡,クローン病,シェーグレン症候群など)など,まずは器質的疾患の有無をチェックする。舌炎の場合,鉄欠乏性やビタミンB12・葉酸欠乏による巨赤芽球性などの貧血疾患が背景に存在することがあるため,血液検査も行う。日常でよく遭遇するアフタは,予後は良好で1~2週間で自然治癒することも多い。再発性・難治性では,歯科領域の不具合を調整する(義歯調整,不正咬合の矯正,不良補綴充填物の除去,口腔内不衛生の改善,癖の是正など)。原因が特定されない口内炎は,過労や免疫機能低下,ストレス,栄養の偏りなども関与するため,生活習慣を是正する。
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