左右の鼻を隔てる仕切りの部位を鼻中隔と言う。この鼻中隔は,成長の過程で不均衡が生じて歪むため成人では約8~9割の人が弯曲している(鼻中隔弯曲)。軽度の弯曲は生理的な変化であり問題ないが,強度に弯曲し鼻閉などの症状を起こすと鼻中隔弯曲症と診断される1)。症状が強く日常生活に支障をきたしている場合には,治療が必要となる。
鼻中隔弯曲がある一定以上になると様々な症状が現れるようになり,日常生活に支障をきたす。症状は鼻閉が最も多く,鼻中隔弯曲の凸側のみならず凹側でも出現しうる。凸側は鼻腔が狭くなるために鼻閉を起こすが,凹側では下鼻甲介の代償性偏倚や気流などによる慢性刺激に伴う粘膜肥厚により鼻閉を起こすためである2)。ほかにも,嗅覚障害,鼻出血,いびき,副鼻腔炎など他の疾患と関連することもある。またアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎があると,その症状はひどくなる。
形態的な診断は,前鼻鏡(鼻孔を広げる器具)検査や内視鏡を用いた視診またはCT検査により行う。CT検査は,全鼻腔における鼻中隔の位置関係および鼻内の形態を把握するのに有用である。鼻閉に対する客観的検査は,鼻腔通気度検査や音響鼻腔計測検査などがある。
鼻中隔弯曲は軽微なものを含めると成人の約8~9割にみられるため,無症状であれば治療対象ではない。鼻閉などの症状で日常生活に支障をきたしている場合に治療が必要となる。治療は,まず内服や点鼻などの保存的治療が行われる。保存的治療により鼻中隔の弯曲自体は改善しないが,症状が改善すれば問題がないと判断されるためである。しかし保存的治療で症状が改善しない場合には,外科的に手術治療も検討される。ただ小児においては,手術をするのは成長期が終わってからのほうがよい。
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