編著: | 仲里信彦(沖縄県立南部医療センター・こども医療センター内科部長) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 192頁 |
装丁: | 2色部分カラー |
発行日: | 2022年12月16日 |
ISBN: | 978-4-7849-6396-6 |
版数: | 第1版 |
付録: | 電子版付き |
診療科: | 内科 |
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「浮腫」は外来や救急診療および入院診療でよく出会う症候です。これまで浮腫をきたした患者の診察を経験してきましたが,その中には複合的な要因であった病態や,浮腫の原因を安易に考えていたところ,実は危機的な疾患が隠れており,ある診療科に特徴的な意外な原因であったことなどがありました。
浮腫診療で注意したい事項として,病歴や身体診察からその原因疾患を鑑別する前に,胸部X線検査,血液検査(BUN/Cr,BNP,Alb),尿蛋白などの検査異常から心不全,腎不全,低アルブミン血症のみに原因を求めたり,理由もなく利尿薬を投与する対症療法に徹してしまうことなどが挙げられます。浮腫自体の治療は急がないこともありますが,気をつけなければ原因疾患やその併存疾患を見逃し,悪化させてしまいます。初期研修医や各科の専攻医の皆様も“これは困った”という浮腫を経験したことがあるのではないでしょうか。
浮腫の診察を困難にしているのは,採血のみ,または画像検査のみで“一発診断”できないことであり,薬剤歴や浮腫に随伴するその他の症状,病態生理を意識した病歴聴取と身体診察が必要であるためと考えます。実診療では患者やその介護者からの訴え,症状緩和の希望も強く,診療側の悩みは尽きません。
本書では,浮腫の総論的な事柄から,内科系疾患のみならず小児科,産婦人科,救急診療などの各分野で経験する意外な浮腫,誤診しやすい状況などを実践的にわかりやすく取り上げました。浮腫はよく経験する症候であり,利尿薬の投与という対症療法だけで一過性に症状緩和される場合もあります。しかし,病態に即した鑑別をしっかりと挙げ,それに対応しなければ沼にはまってしまいます。
このような,一見単純ですが多彩かつ複雑性を持った浮腫の診療について,本書を通して一緒に楽しく学ぶことができましたら幸いです。
2022年10月
沖縄県立南部医療センター・こども医療センター内科部長
仲里信彦