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医業経営ツールボックス 開業編 Vol.3

◆Vol.3 開業地選択スタート! (2)診療圏調査

希望イメージにあった物件が見つかり、やる気満々です。しかし、もっと良い物件があるかもしれないとも迷います。最終判断は、何をもとにすべきでしょうか?

物件が希望に合っていても、開業は経営です。イメージのみはNG!
綿密な診療圏調査を兼ね、エリア調査を人任せでなくご自身の足でも行いましょう。

イメージのみでなく、統計上の数的根拠をもとに判断することは重要なポイントです。
そして可能であれば、併せてコンサルタントなどに調査を依頼することをお薦めします。
プロの評価により不安が払拭されたり、思わぬ問題が見つかったりすることがあります。イメージのみでなく、ご自身の調査結果とプロの調査結果を比較検討し、統計上の根拠もしっかり把握して判断することをお薦めします。

●診療圏調査
まず、基本的な診療圏調査の手法をご紹介します。プロの調査の場合は、各社で独自のデータ・分析方法により行っている場合がありますので、あくまで個人で行う折の目安とお考えください。
1日の来院患者数がどのくらい見込めるかを試算する調査が「診療圏調査」です。
開業場所として適切かどうかの判断材料として必要になります。また、事業計画書を作成する際、医療収入を見込むための重要な材料にもなります。
特に開業資金の融資を受ける場合は、この調査の分析結果により融資の可否は大きく左右されると言っても過言ではありません。

(1)エリアの目安
診療圏は開業予定地を中心に半径500mを1次診療圏(メイン診療圏)、半径1kmを2次診療圏に設定することが一般的です。
ただし、河川・幹線道路・線路・林野・湖沼等がある場合は、エリアが遮断されることがありますので注意が必要です。

(2)統計調査の利用
各診療圏の人口統計・人口動態調査資料は、年齢構成・昼夜の人口差・世帯人数などから診療科目に適しているか、適切な診療時間などの判断材料となります。また、現状の年齢構成に極端に偏りがある場合などは、10年・15年後を予測し、適切な対応策を検討するためにも重要となります。
競合医療機関の分布確認は、単に診療科目だけでなく開業形態・診療時間・休診日など可能な限り詳細なデータを集めましょう。併せて調剤薬局の分布・公共施設・駐輪場・駐車場の有無、駅前物件の場合は、乗降客数調査が重要となります。

Check 1 統計調査

・人口統計・人口動態調査資料
(年齢構成・昼夜の人口差・世帯人数・住居形態等)
駅乗降客数統計
競合医療機関分布
調剤薬局分布

Check 2 地形・環境調査

線路・幹線道路
河川・丘陵・林野・湖沼
駐輪場・駐車場
公共施設
大型店補

(3)来患数の予測
診療圏内の人口×受療率で計算します。
算出した人数を競合医療機関数で分配したものが、最初に予測される来患数となります。
※受療率は、人口10万人当たりの1日当たり推計患者数(診療圏内推計患者数=診療圏内人口×受療率)で、厚生労働省の「患者調査」から、傷病別、性別、年齢別に設定されています。

◆最終意志決定の目安
「もっと良い物件が見つかるかもしれない」と感じたら、まだまだ揺れ動いています。
とはいえ、全てに完璧な物件があるはずはなく、「こだわりの仕分け」を必ず行い、どうしても譲れないものに関して慎重に決断しましょう。「不動産は生き物」です。
目の前にある個々の情報に対して的確な判断を下し、最後に「やってみなければわからない」という開き直りが持てたら決断の時到来です。その上で判断した物件は、きっと開業の最良のパートナーとなる事でしょう。

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