◆Vol.12 自己資金不足を補う開業資金確保手段 開業を予定し、自己資金確保は3年後くらいと考えていましたが、開業希望エリアでイメージ通りの賃貸物件に出会いました。自己資金不足を何らかの方法で補てんし、開業に踏み切りたいのですが、良い方法があるでしょうか? |
内科・小児科をテナント開業の場合、理想的には7,000万円程度が目安と言われています。 ただし、資金面のコストダウンの方法は多様にあります。 |
不足資金調達方法としては、まず公的資金・銀行融資を検討ということになりますが、各自治体による開業医誘致支援制度などを利用しての資金調達方法も、開業希望地によっては可能となります。
ただし、いずれの場合も、事業計画書・収支計画書作成は重要なポイントです。同時に、どのような開業を目標としているかご自身の明確な意思表示も求められますので、この点も留意点です。
1.開業資金の目安と使途区分
開業資金の目安は開業科目により、必要とされる物件面積・導入医療機器等の差により異なります。
参考までにテナント開業の一般的な科目別資金目安をご紹介します。
表 科目別テナント開業資金 ※テナント関係費は平均的賃料を元に試算 | |||||
内科系 | 耳鼻科 | 整形外科 | 眼科 | 皮膚科 | |
面積 | 30~40坪 | 40坪 | 50坪~ | 35坪~ | 25坪~ |
テナント関係 (保証金 他) |
500万円 | 600万円 | 700万円 | 600万円 | 300万円 |
医療機器 | 1,500万円 | 2,000万円 | 2,000万円 | 2,000万円 | 500万円 |
内装 備品等 | 2,000万円 | 2,000万円 | 2,000万円 | 1,500万円 | 1,000万円 |
薬品・広告宣伝費他、 開業準備諸経費 |
1,000万円 | 1,000万円 | 1,000万円 | 1,000万円 | 1,000万円 |
開業後運転資金 | 2,000万円 | 1,500万円 | 2,000万円 | 1,500万円 | 1,500万円 |
計 | 7,000万円 | 7,100万円 | 7,700万円 | 6,600万円 | 4,300万円 |
あくまでも平均的な費用となりますので、導入医療機器をリースで対応、内装を最低限で抑える、一定の内装付済み物件を契約するなど、資金面のコストダウンを検討することで、減額可能な点も多々あることを補足いたします。
また、開業資金には開業時資金と開業後運転資金が含まれ、その点は表の青字部分で簡単にご紹介します。開業時資金としては、賃貸借契約に関わる諸経費や内装・備品他は表の黒字部分、開業後運転資金としては、青字部分が該当します。
開業後運転資金については、軌道に乗るまでの期間の諸経費をカバーできることが必要です。最低でも申請から保険診療報酬受領まで2カ月は、ほぼ収入ゼロの状態でのスタートです。開業後6カ月程度は維持できる資金確保をお薦めします。
さて、ご質問の内科・小児科で一般的な開業時確保したい資金は、表のとおり6,000万円程度が理想ですが、全てを自己資金で賄える方は僅かです。何らかの融資を前提に、開業資金計画を作成する方が大半かと思われます。まずは、融資を受けることが可能な資金の種類からご覧ください。
2.公的資金融資 ※要返済
◎日本政策金融公庫 「新創業融資制度」
事業開始時または事業開始後に必要となる事業資金を一定の条件のもと無担保・無保証人で融資
融資限度額 3,000万円(うち運転資金1,500万円)
◎独立行政法人 福祉医療機構「医療貸付事業」(条件詳細別途規定あり)
3.公的助成金・補助金 ※返済義務なし
制度の詳細は『経営編 vol.12 医療機関での助成金・補助金の利用』でご確認ください。
・創業補助金(各自治体や財団による地域創造的起業補助金)
・事業承継補助金(医院承継の場合)
・雇用関連助成金
・都道府県・市町村単位での医院開業誘致助成金
尚、開業希望地により助成金制度の有無は異なりますので、詳細は個別に調査が必要です。
4.民間融資 ※要返済
●金融機関融資
自己所有の土地建物を担保として融資を受ける場合と、金融機関によっては、無担保融資も可能な場合もあります。
ご質問の場合の担保価値について、仮の評価額で算出した例をご紹介します。
【自己所有物件の担保価値算出方法】 担保価値=実勢価格(評価額)×60%-債務残高
(例)自己所有物件(残債1,000万円)評価額5,000万円とした場合、5,000万円×60%-残債1,000万円=2,000万円
以上、代表的なものとしては、上記のような資金調達方法が考えられますが、いずれも事業計画書・収支計画書作成は必須となります。
融資判断のポイントなどプロのアドバイスは有益と思われますので、コンサルタントや税理士等へご相談・各種セミナー参加をお薦めしますが、最終的にはご自身の開業に関する強い意志表示がメインとなりますので、開業について「なぜ」「どんな」「何をめざす」を常に明確にできることを念頭にお考えください。
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