株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

医業経営ツールボックス 開業編 Vol.5

◆Vol.5 医療モールでの開業検討時の、モール形態別留意点

医療モールの形態が異なる開業候補物件で迷っています。各モール形態による留意点の違いを知りたいのですが。

医療モール形態の特色を熟知し、ご自身の開業方針にあったモール選びが成功への近道です。

開業編Vol.4 医療モールの開業を考えるでは、各医療モール共通の留意点をご紹介しておりますが、ご質問のように、形態が異なる医療モールのどちらを選択するかについては、各形態の特性を理解することが重要です。今回は、モールの形態別留意点を詳細にご紹介します。

●医療ビル型
同一ビル内に複数の診療科が入居していることで、診診連携もスムーズに行え、他院との相乗効果を期待できる点は魅力ですが、そのためにはお互いの信頼関係が前提となるシーンが多発します。
まず、共存共栄の意識で対人関係を維持することが、医療ビル型での開業成功の秘訣とお考えください。その上で、医療ビル型の場合、立地について下記の検証が必須です。

Check 1 クリニック入口と公道との向き、段差の有無、歩道の有無・幅を点検しましょう。
 段差がある場合、解消方法があるか検討が必要です。
 歩道が無い・幅が狭い等の場合、診療科目によっては徒歩圏の集患力が弱まるとお考えください。

Check 2 公道の中央分離帯の有・無を確認しましよう。
 物件付近に交差点や信号付横断歩道等があるかが重要です。
 無い場合は、反対車線側からの集患は厳しいとお考えください。

Check 3 都心の医療ビル以外では、駐車場が確保可能かの確認を行いましょう。
 敷地内にあることがベストですが、なければ近隣に確保可能か確認が必要です。


●商業施設内医療フロア型
駅ビルや大型ショッピングモールの場合は、立地(集患力や駐車場確保)については母体が商業施設のため比較的安心ですが、下記の点は確認が必須です。

Check 1 営業時間・定休日の有無と、母体の営業時間・営業日以外の診療が可能かの確認を行いましょう。
 ・自院が予定する診療日・診療時間と異なる場合は、商業施設側と統一するかどうか。
 ・営業時間外の出入口・通路が、モール専用に確保されているか。
 ・駐車場から遠い判りにくい場所ではないか。……等、重要なチェックポイントです。
 モール内の調剤薬局との営業日・営業時間の連携の確認も忘れすに行いましょう。

Check 2 商業施設内医療モールの場合は、ハード面の確認は最重要点です。(以下Q&A参照)

 Q.天井高は十分ですか?
 A.有効天井高さは2.7m以上必要です。X線室など防護壁のスペースや各種医療機器設置のための高さ確保が必須です。

 Q.2階以上の物件の場合、エレベータの大きさは十分ですか?
 A.バリアフリー・車椅子・ストレッチャー等対応可能なものがベストです。

 Q.電力・動力容量は十分ですか?
 A.全ての使用予定医療機器の電力容量を調査し、必要な容量を確保することが必須です。

 Q.床下や天井裏配管スペースの確保は可能ですか?
 A.床下配管スペース(25cm以上) ※ただし、スペースが取れない場合は床上げという選択も可能
 天井裏スペース(45cm以上) ※スペースだけでなく、はりとスリーブ(配管が通る穴)の位置を必ずチェックしましょう。※給排水配管位置・エアコン排気口・空調ダクトの数は十分かも確認しましょう。


●医療ビレッジ(クリニックタウン)型(独立戸建型)

複数の独立戸建クリニックが存在することから、その規模・企画管理会社のコンセプト・運営姿勢が最重要点となります。
複数と言いながら、2・3科目では、ビレッジとは言い難いものがありますし、ビレッジ全体の運営イメージなどの提案もなく、建物だけ混在するのでは、何のために医療ビレッジで開業するのかわからなくなってしまいます。その上で下記の点を検証しましょう。

Check 1 集患力のある立地・充分な駐車場台数か
 診療科目により、来患数や年齢層も異なることになります。自院の診療圏を十分に把握すること、また駐車場保有可能台数や使用料について確認が必要です。

Check 2 駐車場からクリニック・調剤薬局への導線は問題ないか確認しましょう。
悪天候時・高齢な患者様・車椅子使用時の導線も念頭に検討しましょう。駐車場が広いことは有難いが、患者様の負担になっては意味がありません。この3点の配置に関しては、十分注意が必要です。また、悪天候時・車椅子使用時の導線も念頭に検討しましょう。

Check 3 企画運営会社の運営方針・管理方法に関して十分な確認を行いましょう。
 医療ビレッジ型は、共有スペースは屋外が大半のため、管理規約が重要になります。
 企画運営会社が詳細な管理規約を作成しているか、この内容がトラブル防止に配慮する姿勢があるかどうかの判断材料として重要です。企画運営会社が各クリニックとの調整・ビレッジ全体でのイベント開催など、集患力増加のための企画力があることが、医療ビレッジでの開業のメリットです。この点を十分確認しましょう。

以上、上記3種の医療モールについて、留意点をご紹介しました。
ご自身の希望と診療科目、診療方針により選択肢は多様です。留意点の確認と併わせ検討なさることをお薦めします。

> 目次に戻る <


Vol.1 Vol.2 Vol.3 Vol.4 Vol.5 Vol.6 Vol.7 Vol.8 Vol.9 Vol.10 Vol.11 Vol.12



page top