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医業経営ツールボックス 開業編 Vol.10

◆Vol.10 ビルテナント(医療ビル・医療モール以外)での開業時の留意点

新築賃貸マンション1F・2F部分の一般テナント向け物件での開業を検討しています。立地としては、最寄駅から徒歩10分の住宅地です。
人口急増地でスーパー・コンビニも近く、ドラッグストア(調剤薬局併設)も近隣にあり申し分ないかと考えますが、医療モールや医療ビルのように、医業向けの設計ではありません。スケルトン渡しで内装は自己負担で行う予定ですが、契約前にどのような点を確認すべきでしょうか?

一般テナント向け物件と医療向けの標準構造は異なることを念頭に、天井高・床下配管スペース・電気容量・エレベーター等ハード面の確認が重要です。
内装工事等で補えない、知命的な構造上の問題が隠れているかもしれません。
加えて、同一ビル内のテナント・立地条件・診療圏調査も忘れずに!

基本的な開業地選びで行う立地条件・診療圏調査は、どの開業形態でも同様な調査と分析が必要になりますが、一般貸ビルの場合は、設計時に医業テナント向けに各種ハード面への対応を考慮している物件は少ないだけでなく、場合によっては対応不可能などということも考えられます。
契約後内装設計段階で思わぬトラブルに遭遇しないため『開業編Vol.4 医療モールの開業を考える』でもご紹介しましたが、再度確認事項をご紹介します。

●ハード面の確認事項

Check 1 天井高は十分か(有効天井高は2.7m以上必要)
X線室など防護壁スペースや各種医療機器設置のための高さ確保が必須です。

Check 2 エレベーターの大きさは?(※2F以上の物件の場合)
車椅子・ストレッチャー等対応可能なものがベストです。

Check 3 電力・動力容量は十分か
全ての使用予定医療機器の電力容量を調査し、必要な容量を確保することが必須です。

Check 4 床下スペース確保は可能か(床下配管スペース25cm以上)
トイレ・水回りなどの配管スペースが必要となる医院内装の場合、事務所仕様の床下スペースよりも高い設定が必要です。ただし、床下スペースが取れない場合は、床上げという選択も可能ですが、その場合は床上げ後に確保できる天井高(2.7m以上)に注意が必要です。

Check 5 天井裏スペース(45cm以上)
スペースだけでなく、はりとスリーブ(配管が通る穴)の位置を必ずチェックしましょう。

Check 6 エアコン排気口・空調ダクトの数は十分か
空調ダクト穴などの数が不足している場合、建物の構造上やオーナーの意向で追加することができない場合が考えられます。院内の空調環境は、間仕切りが多い医院内装では重要なポイントとなりますので、十分に注意が必要です。

Check 7 床面の耐加重量は充分か
X線機器など大型医療機器を設置する場合は、300kg程度の重さに耐えられる必要があります。また、不足であれば対応可能かの点を含め必ず確認しましょう。

Check 8 看板は設置可能か
看板は認知度を上げるためには必須アイテムです。設置可能であるだけでなく、看板形態(共同・専用)、設置場所などが効果的な位置であるか確認しましょう。
上記が、物件ハード面をはじめとする確認事項となります。


●立地条件についての確認事項
診療圏調査や前記の医療モールでの開業でもご紹介しておりますが、ご質問のような上層階が住居のテナントビルの場合、建築目的が異なっていることが考えられます。集患力などについてご自身の判断に委ねられる点が増えますので、こちらも再度ご紹介いたします。

Check 1 クリニック入口と公道との向き、段差の有・無も
入口が公道側でない、段差があるなどの問題がある場合は、それぞれ解消方法の検討が必要です。

Check 2 歩道の有・無、幅
歩道無し、あるいはあっても幅が狭いなどの場合は、徒歩での来患者が多くなるエリアでは、影響が大きくなることが考えられます。ご自身で歩いてみることから始めてみてください。

Check 3 公道の中央分離帯の有・無
中央分離帯のある道路の場合、物件付近に交差点や信号付横断歩道などがあるかが重要です。無い場合は、反対車線側からの集患は厳しいとお考えください。

Check 4 駐車場の有・無
敷地内にあることがベストですが、なければ近隣に確保可能か確認が必要です。
特に最寄駅から離れた住宅地エリアや郊外の場合、駐車場の確保は大きな問題です。

Check 5 地形上の問題
河川・山・線路・丘陵地など、同一エリアでも診療圏が分断される要素の一つとなります。集患力を判断する折にはご注意ください。

Check 6 公道からの看板の視認性
看板の掲示場所がどの位置になるかにより、視認性に違いが出ます。夜間の視認性も併せて、昼夜ご自身で確認をお薦めします。

以上、契約にあたっての確認事項をご紹介いたしました。
契約後にどうにもならないトラブル発生ということにならないように、特にハード面の致命的問題のある物件を見極めるために、ご利用ください。

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