山口大(岡正朗学長)は29日、4月に開設した「AIシステム医学・医療研究教育センター」について都内で会見を開いた。センター長の浅井義之教授は、生命現象をコンピュータシミュレーションによって探究する「システムバイオロジー」と医用AI(人工知能)を組み合わせ、人間では発見できない治療法の確立やAI診断支援システムの開発につなげたい考えを説明した。
センターは、同大大学院医学系研究科と同大病院の中に設置。病院に蓄積された患者データを用いて、特定の病態について生体内の様々な階層(遺伝子、臓器など)でのシミュレーションと医用AIによる判別を繰り返すことで原因を探り出し、疾患の早期発見や治療効果の予測に役立てていく。
病院の各診療科には、疾患情報を蓄積するデータベースと医用AI、解析システムを導入。将来的には、全病院体制のAI診断支援システムの構築を目指す。既に「薬剤による不整脈発生リスク予測」「看護記録と患者データに基づく看護の質の向上」などのプロジェクトが進行中で、「いくつかは数年以内に研究成果としてまとめられる」(浅井氏)一方で、実臨床への応用には「さらに数年以上の期間が必要」(同)だという。
センターは、データサイエンスに精通した医療者の育成も目標に掲げている。同大医学部では医用AIの基礎となるプログラミングなどを学ぶ授業を開講しており、学生はセンターの研究にも参加するという。
会見で浅井氏は「基礎にとっても臨床にとっても、医用AIやデータ解析の素養によって視野が広がる」と述べ、データサイエンス教育の意義を強調した。