No.4912 (2018年06月16日発行) P.64
仲野 徹 (大阪大学病理学教授)
登録日: 2018-06-13
最終更新日: 2018-11-28
「ビワイチ」という言葉をご存じだろうか。「びわ湖一周」の略である。歩いたり走ったりする人もいるらしいが、一般的には自転車で一周することを指す。しまなみ海道、アワイチ(淡路島一周)とあわせて、西日本のサイクリングコースベスト3だ。
すでに前二者は数年前に経験している。そろそろビワイチも行っておかないと、寄る年波に勝てず、しんどくて行けなくなりそうだ。ということで、ゴールデンウィークに愛車で走ってきた。
全周約200キロメートルを、速い人は1日で走りきる。そんな無理はできないので、1泊2日の日程に。それも、琵琶湖大橋より北側だけでもビワイチと称していいことになっているので、お言葉に甘えてその短縮コースに。それでも約160キロもある。
水に近い方を走った方が景色がいいので、湖は反時計回りが基本である。琵琶湖大橋の東側からスタート。幸い好天に恵まれて、むっちゃ爽快。国宝彦根城、百名山のひとつ伊吹山、神の棲む島である竹生島などを遠望しながらの琵琶湖畔快走である。
初日の終盤は、湖畔をはなれての上り道になる。最高地点の標高が153メートルだから大したことはないのだけど、70キロも走った後なので、思いの外きつかった。なんとか夕暮れ前にヘロヘロになって湖北にあるお宿に到着。そのあたりまで行くと、湖水はきれいだし、景色も最高に美しい。
よく眠れたおかげで、翌日も快走。ただ、車の通行量が多い狭い国道や、景色の悪い自転車専用道がけっこう長かった。湖東にくらべると湖西のサイクリング環境は明らかに悪い。もうちょっと整備してほしいわ。
みんなに抜かされまくるノロノロペースであったが、ちょい寄り道をして170キロを走破した。ウィニングランは全長1400メートルの琵琶湖大橋だ。26メートルを一気に登り切って、ひゃっほ~と声を上げながらの下りは本当に気持ちよかった。
思っていたよりしんどかった。長距離サイクリングに出かけるのはこれで最後にしよう。ちょっと寂しい気もするけれど、歳をとるというのはこういうことなのだ。
後日、飛行機から琵琶湖を見下ろす機会があった。幾度となく見た景色だけれど、それまでよりもはるかに大きく見えた。意識というのは、経験による実感によって変わるもんやと、えらく感動しましたわ。
なかののつぶやき
「4月、5月の講義月間が無事に終わりました。毎年、学生がなんかトラブルを引き起こしてくれて、エッセイのネタにしてきましたが、今年はありませんでした。よろこぶべきことですが、ちょっと寂しいような気も」