株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

二十数年後の診断(森内浩幸)[プラタナス]

No.5283 (2025年07月26日発行) P.3

森内浩幸 (長崎大学高度感染症研究センターセンター長(長崎大学医学部小児科名誉教授))

登録日: 2025-07-24

最終更新日: 2025-07-22

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 臍の緒は母子の絆の象徴として桐箱の中に大切に保管されている。そんな風習があるのは日本と韓国くらいだそうだ(「へーそう?」と言われたら完全に親父ギャグ)。実はこの臍の緒、意外な形で診断に利用されている。

    先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症は先進国で最も多い先天性感染症で、欧米ではダウン症候群を凌ぐほどの頻度で大きな健康被害を与えている。日本でも出生児の320人に1人は胎内感染している。出生時に症候性なのは2割程度だが、この中には聴覚検査や眼底検査、脳MRIを行わないとわからない症例を含むため、見逃し例が少なくない。さらに感染児の約1割は遅発性に発症する。しかし、生まれてすぐでなければ、先天性CMV感染は診断できない。なぜか? それは、多くの乳児は生まれて間も無く産道感染または母乳感染するため、生後3週も経つと先天性か後天性か区別がつかなくなるのだ。そこで登場するのが臍の緒である。臍の緒は出生直後の検体で、CMVに感染しやすい白血球や血管内皮細胞を含むため、ここからCMV DNAを検出できれば先天性感染と診断できる。

    残り449文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    関連求人情報

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top