厚生労働省の「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施に関する有識者会議」(遠藤久夫座長)は22日、高齢者の疾病予防や介護予防、フレイル予防について市町村が中心となり一体的に取り組むことを求める報告書案を大筋で了承した。かかりつけ医との連携も強化する。厚労省によると、すでに先行モデルとして取組を実施している地域もあるが、2020年度以降、全国的な本格実施を目指す方針。
現行の医療保険制度では、75歳を境にそれまで加入していた国民健康保険制度等から後期高齢者医療制度の被保険者に移行する。保健事業の実施主体も都道府県単位の後期高齢者医療広域連合に変わるため、支援が断絶するケースが多く、問題視されてきた。また、介護予防は介護保険制度のもとで実施されていることから、保健事業との連携の必要性が指摘されていた。
報告書案では、高齢者の疾病予防・重症化予防と介護予防・フレイル予防について、市町村が中心となり取り組むことが効果的だと強調。具体的には①介護予防のために体操などを行う住民運営の「通いの場」をはじめとする支援の場に市町村が保健師・栄養士等の医療専門職を配置、②医療・介護データ解析により高齢者1人1人の医療・介護情報を一括把握、③かかりつけ医による後期高齢者の患者に対する通いの場への参加勧奨や事業内容全体への助言―などを行うとしている。報告書案では、通いの場などに保健医療の視点からの支援が積極的に加わることで、高齢者が日常的な生活拠点で医療専門職による健康相談を受けられるようになり、自然と健康づくりに寄与する取組に参加できるようになると指摘。またフレイル状態の高齢者を適切に医療サービスに接続することで、疾病予防・重症化予防の徹底につながるとした。
報告書案ではまた、一体的な実施の展開に当たっては三師会(医師会、歯科医師会、薬剤師会)の協力が不可欠だと明記。地域の医療関係団体と企画段階から協議を重ねる必要があるとした。かかりつけ医との関係性を深める重要性も強調した。