今年3月、ノーベル賞の前哨戦とも評される「ガードナー国際賞」を受賞した。受賞理由は「制御性T細胞の発見と免疫における役割の解明、ならびに自己免疫疾患と癌の治療への応用」。「制御性T細胞(Treg)」とは獲得免疫の主役となるリンパ球(T細胞)の一種で、免疫の自己寛容を維持する役割を果たす。坂口さんは1995年にTregを判別するマーカーを同定。2003年には自己免疫疾患やアレルギー、炎症性腸疾患のすべてが現れるIPEX症候群の原因遺伝子のFoxp3が、Tregのマスター遺伝子であることを示した。
Tregのコントロールはがん治療でもその効果が期待されている。「がん免疫療法」は、がん抗原自体を体内へ投与することでがん抗原に反応する免疫細胞を患者の体内で活性化させるが、「免疫を抑制するTregも強くなってしまうため、そのままではあまり効果がありません」と語る。「がんの場合は一定期間Tregを減らし、その間にがんワクチンを打ってどれだけ免疫反応を高められるかがカギ。今年からこの臨床研究を始める予定です。すべてとはいわないけれど、がんの3割くらいを免疫で治すことは、可能ではないかと思っています」と意気込む。
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