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がん拠点病院で行う科学的根拠がない免疫療法のあり方とは[お茶の水だより]

No.4878 (2017年10月21日発行) P.18

登録日: 2017-10-19

最終更新日: 2017-10-19

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▶がん診療連携拠点病院等の指定要件として科学的根拠がない免疫療法をどう取り扱うのか、厚生労働省検討会が議題とすることを決めた。実態調査を行った上で、検討が行われることになる。
▶広義の免疫療法とは、免疫本来の力を回復させてがんを治療する方法のこと。標準治療となっているのは免疫チェックポイント阻害剤などごく一部に限られ、ほとんどの免疫療法は、治療効果が科学的に証明されていない。保険診療として認められていないため、自由診療として数百万円の費用を請求する医療機関もある。
▶がん診療連携拠点病院等は、全国どこでも質の高い医療を提供するために厚労省が指定している病院だ。がん診療連携拠点病院は400カ所、地域がん診療病院は34カ所ある。今年1月、拠点病院等の新規指定について審議する検討会で、科学的根拠がない免疫療法をホームページで前面に打ち出す病院が自治体から推薦されたことが今回の議論の発端となった。一部委員は「有害な情報をホームページで出している」として指定に反対した。しかし検討会座長は「現実に全国の医療機関で他の標準的手立てがなくなった患者さんに実施されている事例はたくさんあると思う」として、科学的根拠がない免疫療法を実施していることのみで却下することは避け、医療機関の地理的状況を含めた複合的理由で指定を見送った経緯がある。
▶科学的根拠のある積極的治療ができない末期がん患者のQOLを改善するために、必要な医療は何なのか、科学的根拠がない免疫療法はQOL改善に寄与するのか、患者への情報提供はどうあるべきなのか─。調査結果を末期がん患者にとっての最善の治療とは何かを考える材料にしたい。

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