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■NEWS 本庶氏「がんとの共存も治療の目標に」―日医設立記念式典・医学大会

No.4933 (2018年11月10日発行) P.20

登録日: 2018-11-02

最終更新日: 2018-11-02

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本庶佑氏(京大特別教授)は1日、日本医師会の設立71周年記念式典・医学大会で講演し、「免疫療法はがんを完全になくさなくてもいい。患者の体力とのバランスで、がんとの共存も治療の1つの目標になるかもしれない」とがん治療の将来予測を語った。

本庶氏は、「希望的観測」としつつ、現在、免疫療法はまだ主流の治療法ではないが、「将来的にはこれが主流になる」と期待を寄せた。その上で、がん腫が完全に消失しなくても、大きくならない状態が続くこともあることから、「がんは一種の慢性疾患となり、コントロールできるようになる」との考えを示した。

本庶氏は免疫療法のうち、自身の研究が開発に結びついたPD-1阻害薬による治療について「がん治療法の第一選択になるだろう」と明言。その理由について、①初期に使うほうが効果的である、②3大療法(手術、化学療法、放射線療法)によって免疫力が弱まる前に免疫療法を行う必要がある、③副作用が少なくて済む、④短期間の投与で長期にわたる効果があり、完治もありうる―と説明した。その一方で、臨床現場ではがん専門医が免疫について詳しくないために、重大な副作用を見逃すケースがあると問題視。副作用の対応プロトコルの充実を求めた。また基礎研究では、有効例と無効例の投与前または直後の判定や有効率の向上が課題だとした。

■遺伝子変異の高いすべてのがんで使用可能に

従来のがん治療と比較し画期的なポイントについては、「すべての種類のがんに効く可能性が高い」「投与を止めても長期間有効なので再発が少ない」「がん細胞を直接攻撃するのではなく、免疫系を活性化するので副作用はあっても軽い」と強調。本庶氏は、「現在、米国食品医薬品局(FDA)は、がん腫によらず遺伝子変異の高いすべてのがんへのPD-1阻害薬の使用を認めている。我が国でもまもなく承認されようとしている」と述べた。

■日医最高優功賞が本庶氏に授与

同日の式典で本庶氏は、会長特別表彰者として日医最高優功賞を受賞した。最高優功賞はこのほか、在任6年の日医役員の今村定臣氏、鈴木邦彦氏、通算6年の日医役員・都道府県医師会長の尾﨑治夫氏(東京)、在任6年の都道府県医師会長の馬瀬大助氏(富山)、地域医療に特に貢献した20名へ授与された。日医医学賞は、狩野方伸氏(東大)、津金昌一郎氏(国立がん研究センター社会と健康研究センター)、小林哲郎氏(沖中記念成人病研究所)の3名に贈られた。

本庶氏は「人間を幸福にするためには、優れた医学的治療を行いつつ、患者の不安を和らげることを考えながら医療を続けていくことが重要ではないか」と述べた

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