日本感染症学会と日本化学療法学会は10月17~19日の3日間にわたり、日本感染症学会東日本地方学術集会と日本化学療法東日本支部総会を合同で開催した。COVID-19の感染拡大を受け、プロバイオティクスの代表的存在である乳酸菌の免疫活性化作用に注目が集まっており、感染症をはじめとする疾患の予防効果についての研究や検討が各方面で進められている。18日に行われた基礎研究の感染免疫セッションでは、東北医科薬科大院薬学研究科臨床感染症学教室の田村友梨奈氏が「各種乳酸菌サプリメントによるplasmacytoid dendritic cellの活性評価」というテーマで発表を行った。
田村氏は、インフルエンザウイルスやCOVID-19などの流行により、「一般市民の中においても予防のための免疫力向上への取り組みが活発化している」と述べ、免疫ケアの1つとして、免疫の司令塔といわれるプラズマサイドイド樹状細胞(pDC:plasmacytoid dendritic cell)に働きかける乳酸菌が注目を集めていると指摘した。
pDCにはToll様受容体(TLR)7、9が高発現し、取り込んだ微生物由来の遺伝物質を認識する。その後、Ⅰ型インターフェロンα・βを産生し、抗ウイルス作用および免疫細胞を活性化するとされている。田村氏は今回の試験について「pDCは自然免疫系、獲得免疫系を活性化することが期待されていることから市販製品に含まれる乳酸菌によるpDCの活性化をインターフェロンα産生量により評価する試験を行った」と説明した。
今回の試験は、死菌群と生菌群に分けて計9製品の乳酸菌サンプルを用いて実施。死菌群に関しては、①Lactococcus lactis strain Plasma、②Lactobacillus acidophilus L-92、③Gluconacetobacter hansenii GK-1、④Lactiplantibacillus plantarum L-137、⑤Lacticaseibacillus paracasei MCC1849─の死菌を含むサプリメント5製品について、PBS(リン酸緩衝生理食塩酢)に懸濁し、各製品の乳酸菌一日摂取量を1000億個相当に調整した。生菌群は、⑥Lactobacillus delbrueckii subsp. Bulgaricus OLL1073R-1、⑦Bifidobacterium longum subsp. Longum BB536、⑧Lactobacillus gasseri SBT2055─の生菌を含むドリンク3製品と⑨Lacticaseibacillus rhamnosus CRL1505を含む1種類のサプリメントをMRS寒天培地に塗布し、嫌気培養。培養後に発育したコロニーをPBSに懸濁し、乳酸菌1000億個相当に調整した。
pDC誘導では、マウス骨髄細胞液を懸濁し、培養したpDC含有細胞液を精製。pDC含有細胞液に乳酸菌サンプルを添加し、pDCが乳酸菌を分解しインターフェロンαを放出させ、回収したインターフェロンαの産生量により活性評価を行った。
試験の結果は、死菌群のLactococcus lactis strain Plasmaのみにインターフェロンα産生量の増加が確認された。その他の死菌群、生菌群製品ではいずれも有意な増加は見られなかった。
この結果に基づき、田村氏は「乳酸菌の死菌を含む各製品の1日摂取量と1000億個相当の乳酸菌を用いた試験において、pDCのインターフェロンα産生が確認されたのはLactococcus lactis strain Plasmaを主成分とする製品1種類のみであった」と説明。生菌群では全製品でインターフェロンα産生を示さなかったことを踏まえ、「今回は菌種の同定を行わなかったため、各製品からpDC活性を促す乳酸菌を単離できていなかった可能性がある。そのため今後は培養後に発育した菌の解析を行い、目的の乳酸菌を単離した上で再検討する予定」とまとめた。