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保健医療の経済評価に「労働生産性向上(損失)」を含めるべきか?[深層を読む・真相を解く(84)]

No.4949 (2019年03月02日発行) P.24

二木 立 (日本福祉大学相談役・名誉教授)

登録日: 2019-02-27

最終更新日: 2019-02-27

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本連載(4936号)では、予防医療の経済分析についての、康永秀生東大医学部教授の次の指摘を紹介しました。「大半の予防医療は、長期的にはむしろ医療費や介護費を増大させる可能性があります。そのことは医療経済学の専門家の間では共通の認識です」(「日本経済新聞」2017年1月4日)。

最近、「予防医療政策」についての講演でこれを紹介したところ、「費用対効果を検討する際には、医療費以外に予防による労働生産性向上も考慮すべきではないか?」との質問を受けました。実は、経済産業省事務局も、「予防の投資効果(医療費・介護費、労働力、消費)について(試算結果概要)」(昨年4月18日)で、予防により「高齢者の健康度が向上すれば、間接的なインパクトとして、労働力と消費の拡大が見込まれる」と主張しています。

そこで本稿では、この点を検討します。まず、医療の経済評価研究の歴史・論争について簡単に回顧し、現在では、ほとんどの経済評価は、労働生産性の向上(損失)は除外する傾向にあることを指摘します。次に、私が除外に賛成する理由を述べます。最後に、「中央社会保険医療協議会における費用対効果評価の分析ガイドライン 第2版」(本年2月20日)では、費用対効果評価の「費用の算出」では「生産性損失は、基本分析においては含めない」とされたことに注意を喚起します。

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