【その症状,脳のせいかもしれない】
機能性消化管障害の診断基準であるROME基準が2016年にⅢからⅣに更新された。新しい基準では,消化管および中枢神経の過敏性が大きく取り上げられており,脳腸相関や心理社会的因子の関与が,これまでよりも重視された内容となっている。特にこれまでの「機能性腹痛症候群」が,Ⅳでは「中枢介在性腹痛症候群」と名称を変えており,中枢の関与が強調された病名となった。
わが国では欧米と異なり,学際的痛みセンターは非常に少なく,患者は症状に応じた各診療科を受診することになる。そのため,通院者数の多い腰痛症1)で受診をする整形外科やペインクリニックで慢性の痛みが話題に上ることが多い。しかし,頭痛や胸痛,腹腔および骨盤内臓器の痛みも有病率は高く,あらゆる診療科で痛みの知識は必要である。痛みの部位が違っても中枢神経の過敏性が関与した病態には,三環系抗うつ薬やSSRI,SNRIといった同様の薬剤が奏効する2)。
さらに,慢性咳嗽にもcough hypersensitivity syndrome(CHS)という概念が提唱されており,ガバペンチンやアミトリプチリンなどの痛みに効く薬の効果が認められるとの報告がある3)4)。どうやら中枢神経の過敏性は,痛みに限らずかなり広範な身体症状に関与しているようである。
【文献】
1) 厚生労働省:平成28年国民生活基礎調査の概況. 2017, p19.[https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21kekka.html]
2) Nguyen TM, et al:Aliment Pharmacol Ther. 2012;35(5):493-500.
3) Chung KF, et al:Lancet Respir Med. 2013;1(5): 414-22.
4) Ryan NM, et al:Lancet. 2012;380(9853):1583-9.
【解説】
水野泰行 関西医科大学心療内科診療講師