・子どもは体調の悪さだけでなく,心理的な不安や緊張を身体の症状として表現することが多いため,心身症が多い。
・子どもの心身症は「不登校」につながりやすい。
・身体症状は,症状の持続に伴う不安の影響も受ける。
要点:子どもが訴える症状に心身症的要素があるかどうかを感じ取ることが重要である。
(1)問診:登校状況について確認する。
(2)身体所見:自傷や他傷の痕に注意する。触れることで不安や緊張の強さもわかる。
(3)検査所見:検査を通じて見逃してはならない疾患を否定することは重要だが,器質性身体疾患の検索にこだわりすぎない。
(4)説明:軽微な検査値の異常を無理やり原因に結びつけず,検査で異常を認めないからといって「心の問題である」と決めつけない。
要点:
①症状に対する心の影響について理解をうながし,症状に的確に対応することが,心の影響を軽減し,現在の状態を改善させる。
②症状があってもできるだけ日常性を失わず,可能な範囲の活動を続けることが自信の回復につながる。
(1)生活指導:生活リズムに気をつけ,食事も1日2食以上はとる。自分の状態に合った,疲れすぎない程度の活動を継続する。
(2)薬物療法:適切な薬物の使用は効果的だが,適応外使用に注意する。
・症状は改善しているのに活動性が上がらないときこそ,子ども自身に対しても心理社会的因子について気づきをうながす,良い機会となる。
・精神的健康度が高い子どもであれば,語る行為だけで解決に向かう。
・問題が自分の手に負えない場合には,専門医や専門機関に紹介する。
心身症とは,身体症状を呈する疾患のうち,その発症と経過に心理社会的因子が密接に関わるものをいう。病気になるのは人間であり,人間は多かれ少なかれ社会の中で何らかのストレスを抱えて生きている。たとえば「発表会の前に緊張して,お腹が痛くなった」「重要な試験が終わったとたんに,風邪を引いた」などの事象は,誰しも一度くらいは経験したことがあるだろう。すなわち,どのような疾患であっても,その経過には心理社会的因子が関わっており,すべての疾患には心身症の側面があると考えることができる。
とはいえ,心理社会的因子の影響は,病気になった個人個人がもつ性質や,生活する環境(家庭環境,社会環境)によって,それぞれ異なる。また,その疾患がどのくらい生活に影響を及ぼしているかは,症状がどのくらい持続するか,どのくらい繰り返されているか,に関わる。「どの疾患であっても,心身症と考えることができる」というのは事実であるが,診療上は,心理社会的因子への配慮が必要な場合と,それほど気にせず身体的治療を行えばそれだけで改善する場合があるのも,また事実である。心身症として取り扱ったほうがよい病態は「特に心理社会的因子の影響が大きく,症状が持続あるいは繰り返すことによって,生活に大きな支障が生じているもの」であると考えられる。なお,心身症とは単一の「疾患」ではなく,上記のような幅広い「病態」を表す用語であることを忘れないようにしたい。