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機能性ディスペプシア(FD)[私の治療]

No.5217 (2024年04月20日発行) P.44

田中史生 (大阪公立大学大学院医学研究科消化器内科学准教授)

藤原靖弘 (大阪公立大学大学院医学研究科消化器内科学教授)

登録日: 2024-04-18

最終更新日: 2024-04-16

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  • わが国の機能性ディスペプシア(functional dyspepsia:FD)の定義は,「症状の原因となる器質的,全身性,代謝性疾患がないのにもかかわらず,慢性的に心窩部痛や胃もたれなどの心窩部を中心とする腹部症状を呈する疾患」である1)。FDの亜分類として,心窩部痛症候群(epigastric pain syndrome:EPS)と食後愁訴症候群(postprandial distress syndrome:PDS)の2つにわけられる。EPSは心窩部痛・心窩部灼熱感,PDSは早期満腹感・食後のひどい胃もたれという症状によって規定されている。

    ▶診断のポイント

    年齢,病歴,検査歴,Helicobacter pylori感染の有無などの総合的な判断によって,FDの定義に合致することを確認し診断する。体重減少などの警告徴候がある場合には,上部消化管内視鏡,腹部CT,血液検査などを行い,器質的・全身性・代謝性疾患を除外する必要がある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    診療ガイドラインに基づいて治療を行う1)。FDの一次治療は①酸分泌抑制薬,②六君子湯,③アコチアミド,である。酸分泌抑制薬はプロトンポンプ阻害薬(PPI)かヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2RA)を使用する。カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)については,現在のところランダム化比較試験がないため,治療効果は証明されていない。

    六君子湯はわが国でのDREAM studyによってその有効性が示されており,第2版のガイドラインから一次治療に位置づけられた2)。六君子湯は胃の適応性弛緩や排出能を改善し,食欲増進ホルモンであるグレリンの血中濃度を亢進する。アコチアミドはアセチルコリンエステラーゼ阻害作用を有する消化管運動機能改善薬であり,胃の適応性弛緩や排出能を改善する。アコチアミドはPDS型のFDにのみ保険適用があり,投与前に内視鏡検査が必要とされる。一次治療を4~8週間行い,効果が乏しい場合は二次治療に移行する。

    FDの二次治療は①アコチアミド以外の消化管運動機能改善薬,②六君子湯以外の漢方薬,③抗不安薬・抗うつ薬,である。二次治療で用いる消化管運動機能改善薬はドパミンD2受容体拮抗薬(メトクロプラミド,ドンペリドン,スルピリド,イトプリド),セロトニン5-HT4受容体作動薬(モサプリド)である。抗不安薬は,セロトニン5-HT1A受容体作動薬であるタンドスピロンがわが国の臨床試験で治療効果が示されている。三環系抗うつ薬はメタ解析で治療効果が示されているが,口渇,眠気などの有害事象が多いため二次治療となっている。

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