株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

「骨太方針2019」の社会保障改革方針をどう読むか?[深層を読む・真相を解く(87)]

No.4967 (2019年07月06日発行) P.58

二木 立 (日本福祉大学名誉教授)

登録日: 2019-07-03

最終更新日: 2019-07-02

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

安倍晋三内閣は6月21日、「経済財政運営と改革の基本方針2019」(以下、「骨太方針2019」)を閣議決定しました。私はこれの最大の特色は、本年10月1日の消費税率10%引き上げとそれへの対応を明記し、野党だけでなく与党の一部からも出されていた引き上げ延期論を封じたことだと思います。

本稿では、「骨太方針2019」のうち「社会保障改革」に関わる部分(第2章1(2)全世代型社会保障への改革と第3章2(2)主要分野ごとの改革の取組①社会保障)について、昨年の「骨太方針2018」との異同を中心に検討します。

「全世代型社会保障」改革の中身が変わった

「骨太方針2019」の社会保障改革のキーワードは、「骨太方針2018」と同じく、「全世代型社会保障」です。しかし、両者には2つの違いがあります。

1つは、「骨太方針2018」では「全世代型社会保障」が本文で8回も使われた半面、目次・見出しでは一度も使われていなかったのに対して、「骨太方針2019」では「全世代型社会保障への改革」が「成長戦略実行計画をはじめとする成長力の強化」の柱と位置づけられたことです。

もう1つは、「全世代型社会保障」の中身が大きく変わったことです。「骨太方針2018」では「全世代型社会保障」は子育て・少子化対策と財政健全化との関連で述べられました(「全世代型社会保障の構築に向け、少子化対策や社会保障に対する安定財源を確保する」4頁)。これは、安倍首相が2017年9月25日の記者会見で、「子育て世代への投資を拡充するため」「再来年[2019年]10月に予定される消費税率10%への引き上げによる財源を活用しなければならないと判断した」と述べたことに対応していました。

それに対して、「骨太方針2019」は、「全世代型社会保障への改革」を次の3本柱としています。①70歳までの就業機会確保、②中途採用・経験者採用の促進、③疾病・介護の予防(13-15頁)。②は就職氷河期世代の支援策で、安倍首相が7月に予定されている参議院議員選挙を意識して、4月に集中支援を打ち出したと報じられています(「中日新聞」6月12日朝刊)。①と②には積極的な施策も含まれていますが、それらは「労働・雇用政策」であり、伝統的な「社会保障」とは異なります。

プレミアム会員向けコンテンツです(期間限定で無料会員も閲覧可)
→ログインした状態で続きを読む

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連物件情報

もっと見る

page top