「しびれ」の問診では,しびれの具体的な内容,しびれの分布,しびれはどこから始まり,どのように進展して現在に至るのかを確認する
「しびれ」の原因は,神経障害性と非神経障害性にわけられ,神経障害性は,①感覚神経の経路障害(末梢神経・神経根,脊髄,脳幹,大脳の障害),②感覚神経以外の神経障害(運動ニューロン疾患,錐体外路疾患)があり,非神経障害性には,末梢循環,代謝・内分泌,過換気などに起因する疾患がある
「しびれ」の鑑別診断では,神経学的診察が最も大切で,血液検査,電気生理学的検査,頭部・頸髄・腰髄MRI検査,脳脊髄液検査,四肢の血管系検査などがある
「しびれ」は,一般内科,神経内科,整形外科,脳外科などで診察する,最も多い神経症候のひとつであるが,臨床現場では十分な診察が行われているとは言いがたく,時として精神的なものとして片付けられていることも少なくない。その原因のひとつとして「しびれ」の訴えがあくまでも主観的なものであり,他人にはわかりにくいことが挙げられる。しかし,「しびれ」は患者にとってはきわめて不愉快な感覚であり,日常生活に与える影響は大きいため適切な診断と治療が必要となる。
「しびれ」の定義は患者により異なる。一般的にしびれは,「ジンジン」「ビリビリ」などの自覚的な異常感覚を示すが,時として運動障害である「ふるえ」までもしびれと表現される場合があり,診断に苦慮することがある。しびれは,外界からの刺激を通常の感覚とは異なって感ずる(錯感覚)ときにも使われるが,本稿では,外的な刺激なしに自発的に感ずる非疼痛性の異常感覚をいわゆるしびれと定義する。
しびれの問診では,できるだけ具体的な内容を導き出すことが重要である。たとえば,「正座後のピリピリ」「ムズムズ,虫がはう」「小石の上を歩いているよう」「剣山の上を歩いているよう」「冷や冷やする」などがある。次に,しびれの分布を確認する。体幹・手足のどの部位に,どのように分布しているのかを確認することが重要である。さらに,しびれがどこから始まり,どのように進展して現在に至るのかを確認する。その他,しびれの随伴症状,既往症,家族歴などを詳しく聴取する。