指に外力が加わることで起こる外傷の総称で,球技などのスポーツで発症することが多い。実際には関節脱臼,骨折,靱帯損傷,腱損傷など多くの病態が混在している。近位指節間(PIP)関節の受傷が多い。
大切なことは,つき指の病態を明らかにすることである。単純X線撮影で関節脱臼,骨傷の有無を確認する。靱帯や腱など軟部組織の損傷の評価には,超音波診断装置を用いている。骨折があった場合でも軟部組織損傷を伴うことがあるため,超音波検査での軟部組織の評価をおろそかにすべきではない。つき指の際に確認すべき軟部組織は,掌側板,側副靱帯,腱(伸筋腱・屈筋腱)である。PIP関節の場合,掌側板は中節骨基部に付着する線維性軟骨であり,掌側の安定性に寄与する。側副靱帯は中節骨側面の掌側から基節骨骨頭をつないでおり,側方の安定性に寄与する。骨傷のないつき指ではほとんどの場合,掌側板か側副靱帯の損傷がある。
つき指治療の基本は保存療法である。治療の目的は,痛みのない,安定した可動域のよい指を維持することである。単純X線撮影で多少の変形が残存しても,可動域制限がなければ機能障害は起こらない。治療のポイントは,手術適応のあるつき指を見逃さないこと,手術が必要な変形を残さないようにすること,である。
手術が必要なつき指は,①関節面中央が陥没した骨折のあるもの,②不安定な脱臼を伴うもの,③stener lesion〔母指中手指節間(MP)関節尺側の転位のある靱帯断裂〕,④小指PIP関節橈側側副靱帯断裂,⑤ジャージーフィンガー(深指屈筋腱が末節骨から断裂したもの)である。
指の骨折では,容易に回旋変形が起こる。強度の回旋変形は指機能に大きな支障をきたし,治療には手術を要するため,見逃してはならない。指が伸展位のときにはわからないことが多いため,必ず指を屈曲させて評価する。疼痛が強く指の屈曲が難しい場合は,局所麻酔(指ブロックや超音波下の神経ブロック)をかけて確認する。
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