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(4)アミロイドおよびタウPET[特集:認知症の脳イメージングの進歩]

No.4979 (2019年09月28日発行) P.38

仲野義和 (量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所脳機能イメージング研究部)

島田 斉 (量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所脳機能イメージング研究部)

登録日: 2019-09-30

最終更新日: 2019-09-25

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陽電子放射線断層撮影(PET)を用いてアミロイドやタウなどを可視化する神経病理イメージングは,アルツハイマー病などの変性性認知症において病理学的知見に基づいた生前診断を可能とする分子イメージング技術である

アミロイドPETは脳内局所における一定密度以上のアミロイドβ蓄積を可視化できる

タウPETは脳内のタウ蛋白病変を可視化し,集積の分布や程度は,臨床症状や重症度と関連する

疾患によりタウ蛋白病変は性状が異なり,プローブごとに可視化できるタウ蛋白病変の種類が異なる

神経病理イメージング技術は,神経変性疾患の疾患修飾薬開発を行う上で基盤的な技術となりつつある

1. 認知症における異常蓄積蛋白と画像技術

アルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)などに代表される神経変性疾患は,病理学的には神経細胞やグリア細胞に疾患ごとに異なる封入体(脳内異常蓄積蛋白)がみられることによって特徴づけられる。従来,神経変性疾患は各疾患に特徴的な臨床症候に基づいて診断がなされてきたが,臨床診断と病理学的診断はしばしば乖離するため,確定診断は病理学的診断を待つ必要があり,病理学的診断は今なお神経変性疾患研究におけるゴールドスタンダードとなっている。しかし病理学的診断には,①存命中の患者が病理学的検索(剖検)に至るまでの期間が長く,前方視的検討はできない,②剖検においては死後変化が生じる,③剖検時には疾患が進行した終末期であることが多く,病初期における脳病態の評価は困難である,④病理評価と臨床症状評価の間に時間差が生じるため,神経病理と臨床症状の関係を評価することが困難,などの問題がある。

生体(in vivo)でこれらの異常蓄積蛋白を検出できれば病理学的所見に基づく生前診断が可能になり,神経変性疾患の病態研究ならびに創薬研究の飛躍的な進歩が期待できる。そのため,異常蓄積蛋白は治療上のみならず画像検査における可視化標的としても重要視されてきた。陽電子放射線断層撮影(positron emission tomography:PET)は放射性同位元素で標識された薬剤を用いた核医学検査の一種で,検査目的に応じた放射性薬剤を体内に投与し,その分布を特殊なカメラでとらえることでさまざまな生体機能や脳内異常蛋白の蓄積などを評価することができる。

本稿では認知症の病態に深く関与する蛋白の中で,既に実用的な可視化技術が登場し臨床研究も進んでいるアミロイドβ(Aβ)とタウ蛋白病変(タウ病変)を標的としたPETイメージングについてまとめる。

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