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【識者の眼】「医療はローカルICTを踏み台とすべし」押川勝太郎

No.4996 (2020年01月25日発行) P.60

押川勝太郎 (宮崎がん共同勉強会理事長)

登録日: 2020-01-25

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世の中、とにかくハイテク医療情報のオンパレードです。その傾向は数十年前から変わっていません。しかし近年変わってきたと感じるのは、そのハイテクを一部の先行者だけではなく一般の方々が知らず知らずのうちに持ちはじめたことです。その代表例がSNS (Twitter、YouTube、LINEなど)とスマートフォンです。医療者がこれらを活用することは良く聞きますが、一般の方々がどう活用しているかについては、医療界は軽視していると感じます(失礼)。一般の方は薬や病気についてすぐスマホで検索して色々なサイトで調べますが、信頼性や思い込みから来る誤解への効果的な対策は聞いたことがありません。

改正医薬品医療機器法の成立(2019年11月27日)により、スマホでの遠隔服薬指導が今後、一定の要件の下で実施されるという新しい話題はありますが、いやいや、そんなに難しくやっかいなものではなく、もっと現実的ですぐ活用できる方法があるのです。例えば薬局の服薬指導に課題は多いのですが、日本人の気質か、「はいはい」とわかったふりをする高齢患者への指導は大変です。丁寧に指導しようにも薬剤師の過重労働や本人の理解力の壁があります。ところが今は患者本人がスマホという強力な武器を持っているのです。

この課題解決のために薬剤師に必要なのは撮影角度を取るためのスマホ台のみ。本人を目の前にした服薬指導時に、本人の持っているスマホをスマホ台に乗せて録画開始!

顔は撮影せずに、手元の薬と薬手帳のみ撮影しながら、服薬指導を行います。質問や解説、そこにいない家族への伝言も全部録画してしまいます。これならば帰宅後に何度も再生して、家族と一緒に確認でき(遠隔地の家族には動画をメールで送る方法もある)、セキュリティとプライバシーもクリアできてしまいます。こんなに簡単なのに既にやっているという話はほとんど聞いたことがありません(こちらが知らないだけかもしれませんが)。

予算や保険点数がつく新技術も重要ですが、今すぐ手元でできる見過ごされたリソースも活用しないともったいないですよね。

押川勝太郎(宮崎がん共同勉強会理事長)[ICT][服薬指導]

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