最近、採取した血液に医療用オゾンを混ぜ再び体に戻す「血液クレンジング療法」がネット上で話題となり、その効果を疑問視する声とともに医療広告ガイドラインの観点からも問題視され国会(衆議院厚生労働委員会)でも取り上げられた。さらに2019年11月12日付けの朝日新聞に掲載された「重曹殺菌と食事療法で癌が治る」と謳った書籍の広告が医療者から「科学的根拠のない医療行為を宣伝する広告は掲載すべきではない」と厳しい批判を受けたことは記憶に新しい。
これら話題となった施術・療法は、総称して補完代替療法と呼ばれる。しかし、いきなり肩透かしのような話になるが、補完代替療法について正確な定義はない。
その一方で、多くの国民が西洋医学だけでなく健康食品などのさまざまな民間療法を利用している実態があることを踏まえ、厚生労働省は2012年に「統合医療」のあり方に関する検討会を開催した。
本検討会では、統合医療を「近代西洋医学を前提として、これに相補・代替療法や伝統医学等を組み合わせて更に生活の質(Quality of Life:QOL)を向上させる医療であり、医師主導で行うものであって、場合により多職種が協働して行うもの」と位置づけている。お気づきの方もいると思うが、補完代替療法ではなく「相補・代替療法」となっている。この点を踏まえても、補完代替療法に関する国の捉え方がうかがえる。なお、ともに英語ではComplementary and alternative medicineとなる。
言葉の定義はさておき、当検討会が公表している「これまでの議論の整理」(2013年2月)に以下の記載がある。
「昨今、近代西洋医学の手法では説明しきれない各種の療法を、近代西洋医学と対立的に捉えるのではなく、 むしろ、両者を組み合わせることによって、より大きな効果をもたらし得る新しい医療の概念として、『統合医療』の考え方が注目されてきた」
つまり、本稿のタイトル「補完代替療法は西洋医学に相対するものなのか?」の答えは「No」ということになる。では、補完代替療法や統合医療をどのように捉えていけばよいのか、次回、さらに考えてみたい。
大野 智(島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)[統合医療・補完代替療法①]