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【識者の眼】「薬剤耐性(AMR)対策が注目される理由」具 芳明

No.5000 (2020年02月22日発行) P.45

具 芳明 (国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター情報・教育支援室長)

登録日: 2020-02-21

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ここ数年、薬剤耐性(AMR)対策が注目されている。AMRとはantimicrobial resistanceの略で、微生物が抗微生物薬に耐性となることである。広くはHIVやマラリアなどの耐性も含まれるが、日本では一般細菌の抗菌薬耐性が主な問題となっている。

ペニシリンの実用化は1940年代のことである。そこから始まった数々の抗菌薬の開発は医療を大きく変えた。感染症による死亡が激減し、感染症の治療や予防が進歩して外科治療や抗癌剤治療などさまざまな医療が発展した。しかし、その一方で抗菌薬開発と耐性菌出現が繰り返されることになった。

ここにきてAMRが大きな問題と捉えられるようになった要因はいくつかある。細菌の抗菌薬耐性はますます複雑化し治療の選択肢がしだいに狭くなっている。一方、抗菌薬の開発は滞ってきている。端的に言えば、投資に値しないビジネス環境になってきたのである。さらに、開発途上国での抗菌薬の使用量が増えてきたことも大きい。先進国と同様の治療を受けられる機会が増えるのは良いことだが、十分な院内感染対策を行うことができなかったり、市中で抗菌薬が売られたりという状況がある。これらはもちろんAMRの拡大に大きな影響を及ぼしている。これら医療の要因に加え、畜産業や水産業における抗菌薬の使用や環境への耐性菌の広がりなど、複雑な要因が加わってAMRは世界的な問題となっている。

このような状況を受け、世界保健機関(WHO)は2015年にグローバルアクションプランを発表した。G7やG20でもAMRは主要議題のひとつとなっている。日本国内では2016年に薬剤耐性(AMR)対策アクションプランが発表されて様々な取り組みが行われている。アクションプランは5カ年計画であるが、2021年からは新アクションプランが策定されることが決まっている。

AMR対策が注目されているのにはこのような世界的な背景があり、それに応じて国内でも取り組みが進んでいる。この連載ではその内容について解説していきたい。

具 芳明(国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター情報・教育支援室長)[AMR対策]

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