No.4702 (2014年06月07日発行) P.76
仲野 徹 (大阪大学病理学教授)
登録日: 2016-09-08
最終更新日: 2017-04-03
雑誌の原稿に比べると、単行本を書くというのはかなりハードルが高い。専門的な内容の正確さに気を遣うのはもちろんであるが、できるだけ古びないようにするのが難しい。
10年ほど前、はじめての本、『幹細胞とクローン』(羊土社)を上梓した時にそのことがよくわかった。もう本は書くまいと思ったほどである。が、こりずに2冊目を出した。
生命科学の専門誌に隔月で足かけ4年にわたって連載したものをまとめた『なかのとおるの生命科学者の伝記を読む』(学研メディカル秀潤社)。野口英世にはじまり、古今東西の生命科学者の伝記本を紹介するという内容だ。脳科学者・池谷裕二さんが読売新聞に書評を書いてくださったことなどもあり、そこそこ売れた。最近、3刷してもらい、本屋さんにいっぱいあるので、興味のある方はぜひ手にとっていただきたい。
そして3冊目。なんと、岩波新書なのである。これはお断りするわけにいきますまい。高校時代、「いつか岩波新書に書きたいなぁ」と言ったら、「そんな一流どころに書けるようになるはずがないだろう」とバカにされたことがある。それだけに、感慨もひとしおである。
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