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【識者の眼】「新型コロナウイルス感染症:今、住民の一人一人に総合診療医がいたならば」竹村洋典

No.5008 (2020年04月18日発行) P.65

竹村洋典 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科全人的医療開発学講座総合診療医学分野教授)

登録日: 2020-04-01

最終更新日: 2020-04-01

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新型コロナウイルスがパンデミックとなった今、その罹患者数、そしてウイルス発生の原因、伝染経路、治療薬、ワクチンのことがよく論じられる。しかし、このウイルスに関して人々が持っている漠然とした不安をどうするか、が論じられていないように思える。この不安が住民を医療施設に駆り立てる。それらの人々は大きな病院に向かうかもしれない。

しかし、総合診療医の視点からは違って見える。気軽に相談できるかかりつけの総合診療医がウイルスなどで不安になっている住民の一人一人にいたならば、オーバーシュートにはならないだろうに。「あの先生の専門でないから、そんなこと聞けない」なんて思わずに、「まずはあの先生にかかってみようか」とかかれる近所の医師。受診したならばさしあたり患者の話を聞いてくれる医師。新型コロナウイルスの多くは少なくとも初期は軽症だから。もしかすると問題は症状よりも、その不安が治療の対象なのかもしれないと思ってくれる医師。そして必要な時に、適宜、適切な指示をしてくれる、または後方の医療機関につなげてくれるような医師。そんなかかりつけの総合診療医が住民一人一人にいたらば、病院などに大勢駆け込むことは起こらないと思う。

そしてもう一つ、コミュニティーがいかにしてこのウイルスと向き合うべきか、家族がどうやってこのウイルスと対峙するかを話し合ういい機会である。手洗いや咳エチケットだけではない。ホモサピエンスとしての人類が現在の繁栄を獲得したのは、決してウイルスに強い人間が生き残ったからではなく、ウイルスに罹患した同胞をみんなで助けてきたからである。であれば、今、ウイルスを封じ込めるために住民一人一人がすべきことを話すいい機会である。総合診療医が地域を診る医師であれば、住民が医療機関に来なくても、かかりつけの総合診療医がお便りなどの手段でそれを促進してくれるかもしれない。

住民がどんなときにも安心して暮らせるために、住民一人一人にかかりつけの総合診療医が望まれる。

竹村洋典(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科全人的医療開発学講座総合診療医学分野教授)[総合診療①]新型コロナウイルス感染症]

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